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読み仮名: かめはいがいとはやくおよぐ / 英語タイトル: Kamehaigaitohayakuoyogu
2007/11/16 普通 [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by HUNGRY SPIDER 評価履歴[良い:184(40%) 普通:79(17%) 悪い:199(43%)] / プロバイダー: 4807 ホスト:4582 ブラウザー: 7395
質の良いB級映画。
自分はこういったテイストの作品が嫌いじゃないので、楽しく視聴できました。
様々なところに張り巡らされたギャグ自体は、良識ある人々が見れば「アホか」の一言で唾棄されちゃいそうな代物。本来なら穏やかじゃない単語が渦巻く物語に緊迫感が全く伴わないのは、物足りないと言えば物足りなさ過ぎる。しかし、本作はそのこと自体を価値に変換させていた。
「ヌルいこと」と「下らないこと」は、非常に相性が良い。これらは相乗効果を齎すのだ。「そこそこでいい」といった、ある種の開き直りから来るヌルさ故、下らないギャグも世界観にマッチしてしまい、不快感を抱かせない。逆に、下らないギャグを連発(乱発ではない)することで、一層世界観の緩さに拍車をかける。
本作に於ける最大の美点は、このような相性を最大限にまで活かしていることではないだろうか。これが意図されたものだとしたら、自分は本作に携わった方々に敬意を表したい。本作は確かに安っぽい。しかし、素材自体は安物であっても、その性質を見抜き、最も美味しい形で料理するというのは、並大抵の事ではなかろうから。
ただ、それを手放しで肯定できるかと言われると、首を捻らざるを得ないことも確か。
本作は良質なB級作品ではあるけれど、視点を変えれば「あくまでB級でしかない」作品とも言える。即ち、純粋に質の高い娯楽とは言い難いのだ。自分こそ、本作のヌルさを好きになれたから、終始笑って見ることができたのだけど、その空気感を好きになれないと、それこそ「下らない」で一蹴されてしまうだろう。
正直な話、本作からは「万能性」というものが見て取れない。
普通って一体何? 普通であることって案外幸せかもね? といったテーマは、結構な数の日本人に当て嵌まるであろう哲学だから、この部分を活かすことで、作品に万能感を与えることも不可能ではなかっただろう。
ところが、本作はそうしなかった。哲学を随所で髣髴とさせているにも関らず、作風の軽さ故に、「ま、いいか」でテキトーに終わらせているところがある。いや、もっと正確に言えば、はぐらかしている。作品自体はB級なんだから、「重み」はむしろ世界観の構築を阻害する要因だとでも、製作陣が意識しているようにさえ思える。まぁ、だからこそ、本作のヌルさに味が出たとも考えられるのだが、それにしても勿体無い。折角の素材を活かさなかった感が拭えない。「そこそこ」を突き抜ける力を捨てたようにも見える。
本作には万能性がなかったわけではない。自ら殺いでいるのだ(ちなみに、B級テイストでありながら、テーマの万能性を活かすことにより傑作の域に達した例としては、「下妻物語」の名が思い浮かぶ)。
万能性を殺すことは、ある意味B級作品の運命、或いは呪縛とでも言うべきかも知れない。それ自体は悪いと思わない。軽さを突き通したからこそ、本作は強い独自性が実現したのだから。しかし、やはり「損してる感」はどうしても付き纏う。
何故そう思うのか…作品の視聴に際して、受け手の主観に左右されるというギャンブル性が高まるからだ。つまり安定感(これを持たせるのが「万能性」というやつなのだろう)が弱くなる。まして、本作は「下らないヌルさから来る笑い」が売りの作品だから、主観的にするには大丈夫だろうかと感じられてしまう。受け入れられない場合、価値すら全否定されることにもなり得るから…
まぁ、だからこそ面白い、という考え方もあるし、それ自体も味と言えるのかも知れないけれど…
この作品は良くも悪くも、まるで作中に出てきた「そこそこラーメン」のような感じがした。
あのラーメン屋は、作品を象徴していたように思えてならない。美味しいものを作る技量がありながら、「そこそこ」を振る舞い続けることは、自分の選んだ道…まさしく、万能性というか完成度の高さを目指せる力はあるのに、それを意図して殺した哀しみが感じられた…と言えば大袈裟かな。
楽しく視聴できたことは確かで、見てる間、何度も笑わせてもらった。質の高さが垣間見える部分も多い。実に良くできたB級だったと思う。しかし、作品に渦巻く「損してる感」は如何ともし難い。力を出し切っていないのではないか、という主観的なモヤモヤはどうしても否定できない。もしかしたら、「亀は意外と速く泳ぐ」というのは、作り手が自らを形容したタイトルなのではないか…なんて邪推さえしてしまった。
このような印象を抱かせる作品だったということで、自分の本作に対する評価は「良い」に近い「普通」とさせていただきたい。
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