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壬生の恋歌(ドラマ)


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読み仮名: みぶのこいうた / 英語タイトル: Love Song of Mibu(MIBU NO KOIUTA)
総合
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制作:NHK
脚本:中島史博鹿水晶子神波史男松島利昭
監修:森谷尅久
演出:森平人宮沢俊樹中野芳夫大森青児廣瀬満永山孜
音楽:田中正史
風俗考証:荒川洸
殺陣:美山晋八
語り:前川康一(NHKアナウンサー)

全23話 毎週水曜日 20:00〜20:50

挿入歌 「透きとおる季節」
作詞:三田村邦彦山川啓介 作曲:堀内孝雄 編曲:石川慶彦
歌:三田村邦彦

配役
<架空の人物>
入江伊之助:三田村邦彦
お里:杉田かおる

時雨綱太郎:赤塚真人
鶴橋多喜人:金田賢一
山田峯太:内藤剛志
畑中三郎:渡辺謙
千石静馬:笑福亭鶴瓶

代々木晋:古城逞 猪俣蛾次郎:遠藤憲一、西村利三郎:多賀勝

お美代:川上麻衣子、お里:山咲千里、お縁:新井春美、おぬい:神崎愛
おそで:ちあきなおみ、蓮月尼:岸田今日子

<実在の人物>
近藤勇:高橋幸治
土方歳三:夏木勲
芹沢鴨:財津一郎
山南敬介:岸部一徳
原田左之助:三上寛

新見錦:浜崎満 伊東甲子太郎:竜崎勝 沖田総司:利倉亮 永倉新八:諸木淳郎 藤堂平助:真田実
松原忠司:若林豪 谷三十郎:睦五郎 鈴木三樹三郎:中西宣夫 山崎蒸:高橋仁 野口健司:平田満

坂本龍馬:坂本九
桂小五郎:坂口徹郎

お梅:名取裕子、明里:五十嵐めぐみ、おりょう:秋吉久美子、幾松:岡江久美子
放送開始日:1983/04/20(日本) 放送終了日:1983/10/26(日本)
最終変更日:2007/02/03 21:03:39 / 最終変更者:えぼだいのひらき / 提案者:えぼだいのひらき (更新履歴)
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2007/02/08 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by えぼだいのひらき 評価履歴[良い:118(72%) 普通:35(21%) 悪い:12(7%)] / プロバイダー: 5898 ホスト:6011 ブラウザー: 7395
数多くある新撰組を描いた作品の中でも、主人公が架空の平隊士であり、その中の殆どのお話も同じく架空の平隊士を中心に描くと云う異色の作品です。
主人公の入江伊之助は、それ迄クールな役柄の多かった三田村邦彦さんにしては珍しく明るく前向きで、人間味溢れる魅力的なキャラクターでした。当時は「太陽にほえろ」と「必殺」を掛け持ちしていらした為、ジプシーの転属と云う形で「太陽にほえろ」から退いた時には「この役をやる為に、京都での撮影の掛け持ちが可能な様に、ジプシー役を蹴ってNHKを選んだのか?」と言う声さえありました。しかし本作は、そんな下世話な世論など吹き飛ばしてしまう程の素晴らしい出来であり、派手さこそありませんでしたけれど、心理描写を丁寧に描くと云うきちんとした制作姿勢に支えられた逸作でした。

新撰組の幹部の人物達は何れも剣術の腕は免許皆伝クラスですので、普通のドラマでしたら彼等の華麗な剣さばきや立ち回りも番組としての見所の1つになります。ですが、伊之助達は貧乏な百姓や商家の出であり、剣術の腕はからっきしでしたし、勤皇倒幕すら満足に理解してはいませんでした。そこで彼等は、隊士の面接試験においてどうしたら「ウケ」が良いかを画策し、いかにも嘘くさい決意を熱く語ります。
それでも、貧しい暮らしから這い上がり「侍になりたい」と思う彼等の想いは確かなものでしたから、幹部の人間はそれを汲んだのでしょう。沢山の応募者の中から、めでたく伊之助達10人の若者達が、入隊を許可される事になります。そんな中、読み書きそろばんの腕を買われて入隊を許可され、本人の意思に反して勘定方に配され不満を漏らす(それでいて任務に忠実だったのは何とも愛おしい)者(鶴橋多喜人=金田賢一さん)もいたりして、様々な視点から隊を支える者達を描く手法はなかなかのものだったと思います。

入隊後、程なくあの派手なだんだら模様の新撰組の羽織をあてがわれ、ノリのパリッと効いた七五三の様な借り着状態で、武士になれた事に有頂天になり、京の町を得意気に歩き回る様はいかにも田舎出の青年と云う感じがして、違う意味でとても見所がありました。それでも、時を重ねて行く内に彼等は新撰組の置かれている立場や町の人達からどの様な目で見られているかを肌で感じる様になります。へっぴり腰で、怖さを払拭するかの様に無駄な叫び声を上げながら剣を振るっていた彼等でしたが、いつしか羽織姿が板に付き、剣の構えも様になる頃には、顔つきすらも変わっていました。徐々に周囲が見えて来た彼等は、様々な事に心を痛め、幹部のやり方に疑問を持つ者も現れ、時には厳しい隊の規律(=局中法度)によって命を落とす様な事にもなってしまいます。
史実の流れと共に、タイトルにもなっている様に様々な恋愛や思慕も描かれており、激動期を懸命に生き、志半ばで若い命を散らしてしまった彼等と周囲の人達とのドラマは、どれも切なく心に沁みました。

歴史を語るにおいて重要な人物の中で、近藤勇、土方歳三、芹沢鴨や薩長の人物達は大きく取り上げられていましたが、沖田総司や永倉新八、藤堂平助等が完全な端役扱いと云う作品は、本当に珍しいと思います。
配役は比較的イメージ通りだった様に思いますが、全体的に、ちょっと年齢が高過ぎかなとも思いました。個人的には、芹沢(財津一郎さん)は良いけれど、近藤(高橋幸治さん)や土方(夏木勲さん)は、もう少し若い方でも良かったかなぁと思いましたし、見た目だけならお二人の配役が逆でも良かった様にも思いました。
しかし、若者達と評されていた平隊士達を演じた俳優さん達は殆どが20代前半〜30代前半位でした(三田村さんが30歳位だったと思います)から、幹部の人間に40〜50代の俳優さんが配されたのはある程度仕方のない事かも知れません。それでいて、沖田はかなり若い方が演じていらっしゃいましたから、実際の新撰組の人達の年齢を考えると、その余りの年齢差はちょっと気になる部分ではありました。
そんな中、お話の中心となる伊之助達が配属された隊が十番隊と探索方だった為、原田左之助と山崎蒸だけは比較的重要な役回りになっていました。個人的には大柄で豪傑且つ美青年であったとされる原田が三上寛さんだった事が大変ショック(←三上さん申し訳ございません)で・・・初めの内は「何でこの人を・・・」と思ったものですが、大らかな性格を示す懐の深い柔らかな演技は好感が持て、その中の朴訥さが何とも魅力で、次第に違和感はなくなりました。
ですが、山南敬介(敬助説もありますが、本作のクレジットに合わせます)役の岸部一徳さんだけは、現在程怪しいオーラを出していらっしゃらなかったとは言え、(山南と明里のエピソードは史実としては定かではない様ですが、とても好きな部分なので)ちょっとイメージが違う様に感じられ、とても残念に思いました。
又、本作は現在では抜群の演技力を誇る実力派俳優として名を連ねる方が平隊士として多数出演されており、新人時代から光るモノを持っていらしたのだなと思える演技はまだまだ荒削りではありましたけれど、魅力的であり、その豪華さは圧巻です。私の中での渡辺謙さんや内藤剛志さんのイメージは未だに本作の演技だったりします。
その中でも猪俣蛾次郎役の遠藤憲一さん(本作がデビュー作だそうです)の演技は、入隊時期が他の者よりも遅かったので出番は少なかったですけれど、一際光っており、ちょっとすねた感じの甘ちゃん隊士は、20歳前後の若者特有の頬のこけたちょっと貧相な顔付き(←当時の私には、とってもカッコ良く見えたのですけれど、今なら、そこらのお兄ちゃん位にしか思いませんが・・・苦笑)で、そこがとっても魅力的でした。坂本龍馬(坂本九さん)の想い人のおりょう(秋吉久美子さん)に対する微妙な心理描写は上手に描かれていたと思います。後に何年も経ってから、特撮の「忍者戦隊カクレンジャー」にJr.役で出演なさったのを目にした時は、その弾けた演技に本当に驚きました(笑)。
それと、長州の間者である千石静馬を演じた笑福亭鶴瓶さんの存在感は格別で、バラエティで見せるいいかげんさ(失礼)は微塵も感じませんでした。個人的には、この方のドラマでの「味」は、もっと評価されて良い様に思います。

同時に、歴史を彩った女性達も魅力的に描かれていました。特に、芹沢の想い人のお梅を演じた名取裕子さんの演技は、私が見た歴代のお梅の中では1番好きです。
又、現在では妖艶なイメージである山咲千里さんが、本当に可憐で清楚(且つ、もの凄い美人っ!)な、お千代と云う京都の女性を演じていらしているのも見ものです。現在でも実しやかに囁かれている(間違った)京都の女性のイメージそのものの設定である大きな商家の娘のお千代と、伊之助の幼馴染である時雨綱太郎(赤塚真人さん)との恋は、身分と云うものに引き裂かれてしまうのですけれど、この時代は既に「士農工商」の身分制度が名ばかりの物となり、力(特に財力)関係に崩れが生じて来ているのだと思わせる描写が何ともリアルだったりしました。

私は史実に詳しくないので、本格的な時代劇よりも、本作の様なフィクション部分の多い作品は反って取っ付き易かったです。
それでなくとも、新撰組には様々な説(沖田の病に伏した時期とか、実は土方と沖田はそれ程親しい間柄ではなかったとか、原田の後の馬賊説とか・・・)がありますし、著名な作家さんや俳優さんによって作られた様々なイメージ(近藤達の実年齢と俳優さんの年齢のギャップとか沖田の美少年説とか)もあります。ですので、中途半端に史実に沿っている作品ですと、各々の解釈の仕方で容認出来ない部分もままあるかと思います。が、最初から架空の平隊士であると断ってお話を作っているのであれば、地位も財力も剣術の心得もなかった平民の子が武士に憧れて志願し、つまらない事で命を落としたり、些細な出来事に一喜一憂したり、恋に悩んだりと云った描写は逆に妙に現実味があって感情移入がし易く、共感出来る部分が多かった様に思います。
継ぐ家もない三男、四男の様な立場である彼等が、明らかに子沢山の貧乏所帯の口減らしの為、自ら志願して新撰組になり、戦いの場に身を置く事になりながらも、ちょっとした出来事に故郷を思い起こして、隊士宿の世話役の女将さんや蓮月尼(岸田今日子さん)等に思慕の想いを巡らせる描写は派手な映像ではありませんでしたけれど、とても好きでした。破れた着物を繕って貰ったり、静かに話をしたりする時に見せる、ちょっとした仕草(立て膝に顎をのせて針仕事の手元を見つめたり、照れたり)は憂いを帯びており、生まれながらの武士ではない彼等が最後迄持ち合わせていた、本当の「素」の部分だった様に思います。
ですが、いつの世でも、人は「信念」や「意地」と云った目に見えないものの為に命をかけ、その為に時として周囲の人をも巻き込む悲劇を生み出してしまう事もあるものです。物語の最後に、次々に仲間の命が失われて行く中、幸運にも生き永らえて来た伊之助が、負け戦で死にに行く事が判っていながら「武士として」近藤達に付いて行く事を決心した時、後に残される妻のお里(杉田かおるさん)が「何であんたみたいな人を好きになったんだろう・・・」と言ったセリフがとても印象深かったです。そこには、自分は貧乏な百姓の娘で、百姓から望んで武士になった人を好きになったのだけれど、貧乏でも共に百姓であったなら、家族はこんな思いはしないだろうと云う想いが込められていて、何とも切なかったりしました。

音楽は時代劇らしからぬ演出が施されていました。中でもOP曲は、サントゥールと云う珍しい打弦楽器で演奏されており、幻想的な雰囲気をかもし出しています。
又、三田村さんの歌う劇中歌「透きとおる季節」が時々挿入されると云うNHKらしからぬ演出もありました。因みに恥ずかしながら、レコードを持っていたりするのですが・・・最初に劇中で流れた時は、普通に良い歌だな位にしか思わなかったのですけれど、最終回の最後のシーンで伊之助の決断と2番の詞が妙にマッチしていたので、その時になって、単なる三田村さんのプロモーションの様な役割だけではなかったのだなと感じ、再評価しました。

「心には傷が増えても、俺は・・・俺は行くだろう。澱む水よりも流れていたい。頬を打つ風に向かって・・・」何とも、素敵な詞だと思います。

後、本編とは直接関係のない事ですが、三田村さんの声ってこもっていて、通らない声なのですね。それ迄、クールな役が多かったのであまり気にならなかったのですけれど、こう云う元気な役をなさると・・・ちょっと「あれっ?」って思ったりします。

ロケではなく、スタジオ収録における画像のしょぼさも目立ちましたし、「恋歌」と云うタイトルが示す様に、甘々な描写も目立ちます。
本来なら見せ場となる場面(例えば、局中法度に則った切腹シーンや、沖田の吐血シーン)の演出はとても地味でしたけれど、そこ迄に至る心理描写、特に「生き延びる事」にしがみつく足掻きや未練はそれはそれは丁寧に描かれていました。中盤から局中法度によって命を落とすシーンが増えて来ますが、最期まで侍であろうとする者、それでもぶるぶると震えの止まらなかった者、命乞いをし母の名を呼びながら足掻く者、その姿を直視出来ずにその場を逃げ出す者、無実の仲間を助けようと必死になる者・・・それ等は、生まれながらの侍でなかったからこそ生まれたシーンだったと思います。
次第に厳しい戒律に疑問を持つ者も現れ、組織の中側から少しずつひび割れが生じ、その為に1人1人と登場人物が減って行くのを見るのはなかなか複雑な心境でしたけれど、時代劇ドラマの中では、個人的には特出した位置にある作品です。
欠点を挙げるとすれば、それこそ「時代劇っぽくなかった」って事と言えるかも知れません。近年制作された数本のNHK制作の時代劇に対しても、「見栄えのいい若い俳優を配した学芸会」と評する向きもありますけれど、いつの時代もそう云う評価は付いて回るモノです。
ですが、時代劇は年配者や史実に詳しい層の方々だけの物ではなく、視聴者層の間口を広げる役目として色々な描き方があっても良いのではないかと個人的には思います。
本作は、数多くある新撰組を描いた作品の中に、こんな物語が1つ位あってもいいなって思える、とても素敵な作品でした。20年近くも前の作品でありながら、近年ケーブルTVで再視聴の機会に恵まれた時、注目する箇所は若干違っていましたけれど、ストーリーや場面に対する自分の記憶に殆ど違いがなかった事にとても驚きました。
それ程、自分にとっては印象深かった作品でした。
ですが、世の認知度はNHKと云う全国放送であったにも係らず、思いの外低く、非常に残念に思っています。
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