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妖櫻記(小説)


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読み仮名: ようおうき / 英語タイトル: Yououki
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(本/漫画)
直近発売の本/漫画: 1997/02 ()妖桜記〈下〉 (文春文庫) \602
本/漫画(4件)
売上/新着
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文庫:妖桜記〈上〉 (文春文庫)

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文庫:妖桜記〈下〉 (文春文庫)

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単行本:妖桜記〈下巻〉
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単行本:妖桜記〈上巻〉
参考:\1,631
1993/03
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作品紹介(あらすじ)

赤松満祐が足利義教を暗殺した夜、満祐の側室野分御前は、もうひとりの妾で臨月の玉琴を惨殺する。しかし呪力で胎児は蘇り、玉琴も活傀儡となって野分とその娘・桜姫の前に現れる。
その頃、南朝の血をひく少年・阿麻丸は、南朝再興に執着する周囲の者たちと陰謀渦巻く日々を送っていた。怨霊・呪術・恋情が交錯する伝奇ロマン。 (Amazon「BOOK」データベースより)

著者:皆川博子
出版社:文藝春秋

単行本・上下巻ともに1993年3月発行
文庫版・上下巻ともに1997年2月発行
発売日:1993/03(日本)
最終変更日:2007/04/05 21:26:32 / 最終変更者:遠野 / 提案者:遠野 (更新履歴)
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2007/04/05 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 遠野 評価履歴[良い:236(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 28399 ホスト:28436 ブラウザー: 4184
時は室町時代――嘉吉の乱から長禄の変、禁闕の変にわたり、壮大かつ緻密に展開する伝奇小説。登場人物の多くに関し、山東京伝の「桜姫全伝曙草紙」が、ベースとなっているそうです。
立場や思惑の異なる人びと、その有りようが複雑に絡まりあい、思わぬ場所にめぐる。物語が妖幻に、ぞろりと落ちてゆくさまは、まさに圧巻。
史実や戯作を深く抉りながらも、自身の創作を加え、ひとつの世界を構築する手腕の見事は相変わらず、でした。
私事ですが、本作周辺の歴史に関して予備知識が殆ど無かった為、調べながら読書をしていたのですが、頁が進めば進むほど、著者の創り手としてのちからを、まざまざと見せ付けられるように感じました。
今迄読んだ皆川作品の中で、読了までに最も長い時間を要し(上下巻ゆえ、頁数も最大、ではあるのですけれど)、作中の複雑な人間模様に、引っかかってしまう事もありましたが、読み応えはそれにまさります。

混沌とした世で、主人公、阿麻丸――南朝の落胤が、思索し、懊悩し、疾走する。己が無力に浸りこみ、強いものに憧れ、執着できるものを求め、さまよう。
男女問わず、強烈な個性を持った登場人物が多いなかで、彼のような、立場も能力も、平凡ならざる人物が、もっとも人間的なのが、面白いな、と思ってしまいます。鬱々と内向することの多い主人公でしたが、一番に共感できたのも、矢張り彼でした。振り返ってみれば、人の弱い心に、妙に共震させる部分を持つ造形だったなあ。好きにはなれないけれど、同調してしまう。

逆に、決して同調は出来ないのだけれど、何故だか好きだったのが、謀反者、赤松満祐の側室である、野分御前でした。我が道を行き過ぎるところが、空恐ろしくもあるり、時に爽快でもあり。蘇生から、完全復活(?)に至るまでの彼女には、あまりの凄まじさに、仰け反ったりもしてしまいましたが……。
阿麻丸と彼女の関係の変遷も、注視してみると面白い。一途なのかそうでないのか、いまいち良く解らない女性でした。
難を言うならば、彼女と対立する存在であった玉琴が、いまいち薄く感じられたのが、残念。怨霊と化して尚、始終、野分御前の強烈さに負けっぱなしだった印象が拭えないのです。

上巻は調べながらの読書で難航したのですが、下巻に入り、ある程度慣れ――子ども世代が舞台上に登場するに至り、俄然ペースが上昇しました。
彼らを巡る状況の妖艶さ、悲劇性、不安と恐怖。離れ離れであったそれらが、徐々に繋がってゆく面白さもありましたが、なによりも展開がドラマチックなのです。こまやかな心理描写や深謀遠慮、果ては妄想妄執までが、物語に絡まり、世界を織り上げてゆく。ぐいぐい惹きこまれ、巻末まで、頁を捲る手が止まりませんでした。

そういえば本作は、偶に著者が文章の合間に、合いの手を入れているのですが、これが中々に面白い。キャラクターの性格を分析したり、容姿に纏わるあれこれに疑問を呈してみたり。
なかでも、動かない主人公に著者が業を煮やす→別場所に居る他キャラクターへと、視点を変更しようとする→とある要素が働き、物語が動きはじめる……と、自分の手の内を見せているあたり、興味深い手法だなあ、と思うのです。
言葉の繰りの巧みも、何時もの如く。閑話休題と書いて、あだしごとはさておき、と読む。折に触れて現れる美しさに、陶然としてしまいます。

ある程度の知識が無ければ、読了は容易ではない小説でしょうけれど、一読の価値は、大いにあります。
毒もそれなりに強く、濃厚にすぎるきらいはありますが、それらに耐性があるのならば、是非に。
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