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小説評価: 958位 <= 959位(2,341作品中/偏差値48.47) =>960位

彰義隊 (小説)

読み仮名: しょうぎたい
総合情報評価
(評価投稿)
日記
2007/01/29
懇談室画像/壁紙商品
(本/漫画)
直近発売の本/漫画: 2005/11 ()彰義隊
本/漫画(1件)
売上/新着
201407
単行本:彰義隊

参考:\1,890
2005/11
()

1.激動、激変を推進する者、拒む者の人生ドラマ
著者:吉村昭 出版社:朝日新聞社
発売日:2005/11(日本)
最終変更日:2008/04/22 20:43:44 / 最終変更者:634 / 提案者:634 (更新履歴)
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1. 2008/05/09 とても良い by 634 [編集・削除/削除・改善提案//論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿]
評価履歴[良い:1379(50%) 普通:540(19%) 悪い:851(31%) 推薦人:51 推薦評価:165] / プロバイダー: 10353 ホスト:10611 ブラウザー: 6342
吉村昭最後の作品ですが、彰義隊はタイトルに反し、あまり登場せず、輪王寺宮の生涯を描いていた作品でした。
幕末の江戸の戦いを回避するために、輪王寺宮が穏健的な意見を求めたり、なるべく流血沙汰を避けたり・・・という思いだったのですが、それが官軍側には理解されず、むしろ、幕府側に付いた不届き者という形にされてしまいます。天皇家の数百年に渡る幕府への憎悪という部分がクローズアップされていて、非常に重苦しい内容でした。そういった人類の歴史の変わり目という部分がいろいろと見えてきますが、明治維新では賊軍とされた幕府軍のその後の姿を見ていると、とても哀しく、悲惨な末路を辿っている感じでした。

そういった中で、常に勝ち組に祭り上げられている官軍サイドではなく、負け組の旧幕府軍サイドと、その幕府側と心を通わせた輪王寺宮の生涯を見ていて、不要な争いや、権力者の不毛なほどの憎悪の為に、死ななくても良い人間まで死んでいったという部分が非常に重い感じであり、その意味では、彰義隊の人々も、そんな中での犠牲者達だったと言えそうです。

歴史の流れの中で、勝者側が敗者側を不必要なほどに弾圧し、新たな憎しみを生むという部分と、そんな憎しみの中で歴史が・・・という負の側面もこの作品では捉えていると思います。徳川への、武家社会への皇族の憎悪や、ふとした誤解から・・・という部分で起こる人類社会の危うさと歴史の悲劇という部分はこういった作品の中からも読み取れるように思えます。人の歴史は憎しみからしか生まれないのだろうかとも思えそうで、暗然とする部分もあったし、血の流れない改革はないというのが、こういった作品からも読み取れました。

しかし、欧米列強の中で、なんとか日本は欧米諸国の圧力を受けないように・・・という意味で明治維新は成功したのだし、そんな歴史を辿っていくと、負け組で賊軍呼ばわりされながらも、滅びながらも平和的に、国土を焼き払わないようにした幕府軍と違い、官軍として自惚れ、慢心していた故に、日露戦争でのまぐれ勝ちの後に、太平洋戦争で日本中を焦土にしてしまった皇族の負の側面が、この作品の中でも表れていると思います。官軍として前進している時の傲岸さは、そんな旧日本軍に繋がっていきそうな・・・と思えるものがありました。

歴史物としては、そういう意味で、非常に心に残るし、今でも注視できるものがありました。作者がこれの前に日露戦争や太平洋戦争関連の作品を多く描いている部分もあるせいか、非常に重厚な作風に仕上がっています。そんな作風とタイトルに反して、彰義隊が思いのほか出番が少なく、活躍ができないという不満もありますが、作者の作品は多くがそういった達観視しているものであったし、歴史を見る上での見識を植え込んでくれました。

改革の中では、急進派と穏健派がいるのですが、どちらかの対立という側面も出ており、そんな急進派のやることにしろ、穏健派の慎重さにしろ、水と油という言葉がよく使われるのは、こういった時が一番多いのではないかと思えそうなものもありました。意見の相違による対立が歴史上で多く繰り返されてきた事も事実だし、それは人と歴史の数ほど、多く存在するのですから。

歴史の中で生きてきた人々と、その周囲も・・・というリアリティと側面にも本作の持つ作者特有の視点と作風は、最後まで健在だったといえました。
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