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[小説]海の祭礼


うみのさいれい / Umi no Sairei
文学総合点=平均点x評価数1,035位/3,067作品中(総合3/偏差値49.02) 1,034位<= =>1,036位
1986年文学総合点14位/35作品中 13位<= =>15位

直近発売の本/漫画 2004/12 ())海の祭礼 (文春文庫) 700
本/漫画(4)
売上/新着
223926
文庫:海の祭礼 (文春文庫)

700
2004/12
()
461152
文庫:海の祭礼 (文春文庫)

489
1989/11
()
837255
ハードカバー:海の祭礼

1,377
1986/10
()
1374364
単行本:海の祭礼・磔 (吉村昭自選作品集)

3,059
1991/06
()
      
評価統計
評価平均最高(3.00 pnt)
評価総合点3.00
文学順位(総合点)1,035位(3,067作品中)
偏差値(総合点)49.02

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著者:吉村昭
出版:文藝春秋
日本 開始日:1986/10 文藝春秋
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日本1,16211
海外35200
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最終変更日:2010/06/08 / 最終変更者:634 / 提案者:634 (更新履歴)
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日本に憧れを抱いて船乗りとなったインディアンと白人のハーフであるアメリカ人ラナルド・マクドナルドと、当時の幕府通訳の森山栄之助との出逢いを通じて変化していく幕末を描いた物語でした。

捕鯨船船員となったマクドナルドは日本近海から密入国しようとし、当時蝦夷地だった北海道の焼尻島や利尻島に上陸し、そこでインディアンとある意味近い人々であるアイヌ人に労れながら、幕府に引き渡され、通訳の森山と出逢い、互いに異国語を学び合い、そして親交を深めていったのでした。

インディアンの血を引くことから母国では差別されていたラナルドは、母国から離れた新天地で何かを・・・という思いがとても強かったのでしょうが、鎖国政策で異国船をまだ打ち払っていた日本へ行きたいなどとは普通思い付かないことなので、余程母国で良い思いをしなかった事が判るし、白人の父親から煙たがれ、インディアンの母親からの影響が強かったという部分も見えてきます。

ペリーが日本へやってくる5年前の1848年に当時の長崎奉行にいた森山は人畜無害な異国人として長崎に来たマクドナルドと出逢い、その人柄や異国語を覚えることに互いに心を開き合い、異なる言葉を覚えていった姿勢はとても穏やかであり、理想的な異国人との付き合い方のように思えました。

こういった言葉は通じなくても、互いを理解し合いたいという気持ちを持つことは重要であり、マクドナルドと森山の関係は、策謀やエゴ、屈服させることや打算が渦巻いている外交のそれなんかとは違い、実に美しい関係になっていたと思います。異国人と付き合うにはこういった姿勢が重要だという指標になっている感じでした。

これが当時長崎にいたラゴダ号乗組員の保護されたにも関わらず、無礼で横柄な態度で日本を困らせた事に加え、高圧的に開国を迫ったペリーやハリスのそれとは余計に対比として映るのだろうし、マクドナルドから教えられた英語をマスターした森山達が、後にラゴダ号乗組員の非をペリー達に叩きつけ、ペリー達に考察と妥協の余地を与えたのは痛快な部分もあると思います。

マクドナルドと森山が互いに謙虚になり、親交を深めて異国の言葉を覚えていった姿は、当時の世界でも珍しかった事だろうと思えます。日本に憧れを抱いた外人を鎖国体制であるにも関わらず保護して丁重にし、そして異国の外圧から日本を守るため、異国人と付き合っていく為に・・・という森山の姿勢は高く評価されるべきだと思います。ただ、幕末は様々な事件や人物が多かった為に、こういった事件やお話で知られていない部分も多いだろうといえます。

マクドナルドが日本初の英語教師という形になったことは、一般には知られていないだろうと思います。同様に森山が英語をマスターした最初の日本人であるという事も知られていない感じです。目立たない形とはいえ、こういった人物の姿は、歴史のメジャースターの影に隠れているのも大きいでしょうけど、もっとクローズアップさせて欲しいと思えます。(NHKの歴史番組ですら、マクドナルドや森山の事を採り上げようとはしなかった。)

森山にも、マクドナルドにも、互いに顔を合わせていた半年間が人生の中で一番最良の時だったようにも思えます。滞在期間が一年に満たなかったマクドナルドは本国へ送還されましたが、その後は二度と日本の土を踏むことなく、本国で一生を終えました。森山も幕末での対外交渉に精力を振り絞った結果、急速に衰え、明治維新後に病みつかれてこの世を去りました。

この二人を再び合わせてほしかったのですが、そうならなかった事と、森山とマクドナルドの偶然の出逢いが、美しい関係を生みだした事を思えば、歴史の偶然と心を開いて、腹を割って話し合う互いの姿という歴史の偶然と、人との出逢いの大事さという部分を今に伝えていると思えますし、本来、こういう関係の積み重ねが良い歴史を生みだしていくように思えます。

世界の外交や安全問題に貿易摩擦に防衛問題のようなものが、最近になって盛んに議論されていますが、そういった国家間のエゴと関係によって生まれる歪みや問題点は、森山とマクドナルドの姿を見ているとちっぽけなもののようにも思えてきます。そういった打算や理屈、銭金抜きで相手と付き合い、きちんとした理念と信念を持って親交を深め合う事こそ本来は重要なのだという部分も見えてくるようです。

けれどもそうとはいえないような混迷の世界情勢と、対外関係は今も継続中だといえます。マクドナルドと森山の遺した功績と関係、影響を考えれば、今一度考え直すべき部分は多く見えてくるのもあるだろうと思えます。

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