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[文学]倒立する塔の殺人


とうりつするとうのさつじん / Touritsu suru tou no satsujin
文学総合点=平均点x評価数1,054位/3,067作品中(総合3/偏差値49.02) 1,053位<= =>1,055位
2007年文学総合点27位/72作品中 26位<= =>28位

直近発売の本/漫画 2011/11/17 ():倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫) 720
本/漫画(2)
売上/新着
92133
文庫:倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

720
2011/11/17
()
339048
単行本:倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

1,365
2007/11
()
        
評価統計
評価平均最高(3.00 pnt)
評価総合点3.00
文学順位(総合点)1,054位(3,067作品中)
偏差値(総合点)49.02

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作品紹介(あらすじ)

戦時下のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそりと置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。
『倒立する塔の殺人』。
少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。
やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える……。

著者:皆川博子
出版社:理論社(ミステリーYA! より)
装画:佳嶋
日本 開始日:2007/11/28(水)
利用状況
日本1,69511
海外55300
最近の閲覧数
1141110112
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最終変更日:2008/07/18 / 最終変更者:遠野 / 提案者:遠野 (更新履歴)
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by (表示スキップ) 評価履歴[良い:250(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 28399 ホスト:28451 ブラウザ: 4184
第二次世界大戦から終戦直後に亘る、少女たちの物語。ひとりの女学生の、不可解な死にまつわる謎を紐解き、それに重ねるように、もう一つ、フィクションを紡いでゆく。
所謂作中作の形式を採った、入れ子式の作品です。対象は中高生との事ですが、なんのその、大人が読んでも存分に満足できる、美しいミステリーでした。
文章に含まれる毒が、比較的柔らかく、甘めである分、これまで読んできた皆川作品の中では、最も人に薦めやすい一冊であるやもしれません(笑)

舞台は戦争の掌中にあった東京。都立とミッションスクール、二つの女学校に跨り、物語は織りあげられてゆきます。
貧困や殺伐、統制の時代にあって、しかし彼女たちは、そこから少しズレた線上に立つように歌い、ダンスを踊り、小説に耽る。
閉じられた人間関係の中でさざめき、思慕を募らせ、嫉妬し、ときに排除に力をかたむける。
勿論、時代が時代であるが故、彼女たちは挺身女子隊として、労働に勤しまなければならない。学生とは名ばかりの色に乏しい暮らしの中で、それでも――だからこそ、少女たちは、内へ内へと、独自の世界を造りあげ、入り込んでゆくかのようです。

全編通しての主人公であろう阿部欣子が「イブちゃん」(異分子のこと)と呼ばれていたのは、それら少女達の傾向に、深く関わり、沿うたが故なのでしょう。
出生云々だけではなく――出生との関わりは、それなりに大きいだろう。欣子の日常に、上流階級出身の少女達が求める、形ないものが入る隙など、ありはしなかった――彼女は彼女で、少女達の世界は、理解の範疇に無かっただろうから。
ならば、何の違えもなく、欣子はこの物語にとっての異分子であり、また彼女は、「そうでない者」との橋渡しの役をも、果たしていたように思います。
彼女の朴訥さや逞しさ、真っ当さは、他の少女達の不安定さと相俟って、非常に頼もしい安定を齎してくれました。只、その安定故に、彼女は一度託されたにも関わらず「倒立する塔の殺人」の執筆には、加わらなかったのでしょうか。別の人物に、役割がスライドされてしまって、少し残念だな…と思っていたのですが、熟考するまでもなく、その方が、だからこそ、彼女なのかもしれません。

本作、ミステリーものとしても大変面白く、トリックや謎解きも、大変興味深く読むことが出来ました。ですが、私はやはり、幻想の色に、作品全体に含まれる美しさに、つよく惹かれてやみません。
随所に響く歌声の輝き、歌詞と文章の絡みの妙には、毎度の事ながら、眈溺させられるばかりです。

歌だけではない、絵画もダンスも、非常時における芸術の在りよう、際立つ存在感に、ぐいぐいと引っ張られてしまいます。
私には知りようも無い時代の物語なのに、皮膚にそのまま馴染むよう、沢山が、かけがえのないものとして胸に染み渡る。
これはまた、戦争を知っているからこその筆なのでしょう。端々に蟠る、懐かしいような感覚は、著者がその時代に在ったから――そういえば、引き算してみれば、皆川氏はこの頃に女学生だったのですね…確り世代だった訳だ、それもまた、凄いなあ。

ここまで一冊の本にのめり込んだのは、久々かもしれません。装丁や挿し絵も、凝っていて、それだけでも、とても見応えがありました。本書を通じて佳嶋氏を知ることが出来、まさに出逢いに感謝、と云ったところ。
巻末の『倒立』美術館の存在も有り難かった。エゴン・シーレが好きなのです。
端から端まで、余りに私好みで、思いの丈を書ききったら、どれほどの長さになることやら(苦笑)

何はともあれ、徹頭徹尾、素晴らしい作品でした。皆川作品を読んだ事が無い人にも、是非に!と薦めたい一冊です。

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