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[文学]薬指の標本


くすりゆびのひょうほん / Specimen of ring finger(Kusuriyubi no hyohon)
文学総合点=平均点x評価数476位/3,067作品中(総合7/偏差値52.80) 475位<= =>477位
1994年文学総合点11位/57作品中 10位<= =>12位

直近発売の本/漫画 2007/06/15 ():はじめての文学 小川洋子 1,300
本/漫画(3)
売上/新着
Bray/DVD(1)
売上/新着
43345
文庫:薬指の標本 (新潮文庫)

380
1997/12
()
47296
単行本:はじめての文学 小川洋子

1,300
2007/06/15
()
288374
単行本:薬指の標本

1,325
1994/10
()
25250
薬指の標本 SPECIAL EDITION [DVD]

3,990
2007/03/23
()
      
評価統計
評価平均とても良い(1.75 pnt)
評価総合点7.00
文学順位(総合点)476位(3,067作品中)
偏差値(総合点)52.80

人数0310000
割合0.0%75.0%25.0%0.0%0.0%0.0%0.0%
加算分布0%75%100%100%100%100%100%
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作品紹介(あらすじ)

楽譜に描かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を持ち込む『標本室』で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴を履いてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。奇妙な、そしてあまりにも密やかな二人の愛。

著者:小川洋子
出版社:新潮社
掲載誌:新潮
・薬指の標本 1992年7月号掲載
・六角形の小部屋 1994年8月号掲載
文庫版:新潮文庫より、1997年12月発行
日本 開始日:1994/10/30(日)
利用状況
日本2,83044
海外80400
最近の閲覧数
1040021102
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最終変更日:2008/08/10 / 最終変更者:遠野 / その他更新者: TCC / 提案者:afterglow (更新履歴)
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2008/08/10 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:250(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 28399 ホスト:28451 ブラウザ: 4184
端整で、淡々とした小説です。大きな情動のうねりもなく、凪いだふうに、物語が進んでゆきます。
2005年にフランス映画監督の手で、映像化も成されました。

標本室と云う、現実味を帯びない場所で、しずかに開かれ、あるいは閉じられてゆくモノ達。その中で、或いは周辺で、展開するさまざまが、美しい作品です。
ひとの執着や、忘れ難いもの、忘れられないものを、標本にして、持ち手から切り離す標本技師と、事務作業を一手に引き受ける主人公。主要登場人物はこの二人だけ、濃密に閉じられた空間で、しんしんと、水中に落ちてゆくような時間と関係性は、直接的な描写は無いにしろ、とてもエロティックです。

牽引されるように訪れる、依頼人――依頼内容も、とても印象的でした。火傷の跡にはどきりとさせられ、主人公と同調するかたちで、不安にもなりました。
音楽の標本は、繊細で切ないファンタジーのよう。演奏に使われた部屋の、ごちゃごちゃとした生活感や、鍵盤の上の皴だらけの指との対比が、何故だか胸に来てしまいました。
一番好ましかったのが、文鳥の骨の標本を望んだ、靴磨きの老人のエピソードでした。
ですが、彼に関して言えば、その後の靴に纏わる言葉の方が、より深く、記憶に刻まれています。

靴が足を侵すほど、ぴったりとした靴――主人公が技師に贈られたそれは、まるで標本箱の中の蝶を留める、ピンのようではないか。思えば、彼が示す愛情は、人間に向けるものと云うよりも、物質に向ける偏愛、それこそ所有欲のように感じられてしまいます。
故に、主人公が技師に傾いてゆく姿には、微かなれど、ある種の惧れを抱かずにはいられませんでした。
「もっと根本的で、徹底的な意味において、彼に絡め取られているんです」
人間として、この言葉はとても、怖いものだと思う。

そもそも、標本とは何だろう……と、ふと、考えてしまいます。標本製作を依頼した人々は、その殆どが、作られた標本を、2度見に来ることは無いと、技師は話す。
只、視界に入れたくないのならば、捨ててしまえば良い。半永久的に残るであろう形に拘るのは何故か。切り離したい、けれど所有したい――と願う、心の現れか。
それならば、望む気持ちを、理解出来るような気がします。恐らく私自身、深層を探れば、ひとつくらいは標本にして貰いたいモノが、出てくるのでしょう。

曖昧に、そしてやっぱり怖いかたちで幕を閉じる物語。なれど、溜息とともに、惹かれずにはいられない、作品でもありました。
がぜん、映画のほうにも興味が湧きました。近いうちに、視聴してみようと思います。

共に収録された、「六角形の小部屋」も、不可思議に、胸に収まる作品です。語り小部屋、とは、これまた現実味は無いけれど、需要はありそう。
精神における、明確な効果が描かれず、しかし、のめり込みすぎると危険であることは描かれているところが、大げさに奇跡的でなくて、良かった。

登場人物の機微描写も、秀逸でした。主人公の、それまで好意を抱いていた人物を嫌いになる経緯の描きが、巧みだな、と感嘆をひとつ。彼女の経験は、当然私には無いのだけれど、「ああ、分かるなあ」と、当たり前のように共振してしまう。彼女の心のぶれは、特殊なようで、特殊ではない……と思うのですが、如何でしょうか。
何にせよ、感情シフトの経過が、非常にリアルだと思います。ベルトの間に挟まったムール貝、の一文が、映像となって、眼裏に焼きついて離れないのです。

ウェットでありながら、ドライでもある、定義付けの難しい小説2編でした。捉えられないままに、気が付けば、深い場所へ嵌っている。文字に沈むような読書をしたい方に、お勧めかもしれません。

[推薦数:1] 2007/09/30 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:9(90%) 普通:0(0%) 悪い:1(10%)] / プロバイダ: 44869 ホスト:44963 ブラウザ: 5234
ネタバレしているので注意してください。

小川さんの作品を読むたびに文章が美しいなあと思います。
淡々としていて読みやすい文章なのに、誰かの言葉だったり、何気ない一節だったり、なにかしらが私の心に残るのだからすごい。

この「薬指の標本」は小川さんの文章だからこそ作り出せる世界だと思います。
静けさ、美しさ、恍惚、すべては小川さんの文章によって成り立っている。
私をその不思議な世界へ連れて行ってくれる。
そして、一度入り込んだらなかなか抜け出せなくなる。
その魅力にとりつかれてしまうのです。

標本室があったら、私は何を標本にしてもらおうかと考えながら読んでいました。

読んでいるときの印象は、だんだん傾いていっているなあというものです。
主人公の女性が薬指を失った時点で傾いていた何かが傾いて、
崩れていっていると思いました。
その傾きを直そうとした人は何人かいたのに、彼女は自らその道を選ばなかった。

最後になって、とてつもなく恐ろしくなりました。
靴に侵食されていくうちに標本室で働く弟子丸氏にも侵食されていく彼女。
彼女としてはきっと幸せだったのだろうと思うのですが、
読んでいるこちらは恐ろしくてたまりませんでした。
でも、その恐ろしさにとりつかれてしまったのも事実です。
彼女の恋愛はひどく倒錯的だけど、美しくもあると思います。

もう一編の六角形の小部屋もすごくよかったです。
心の中で思っていることを実際に口に出して言える場所をきっと人は求めています。

映画を観てみたいです。
この物語にはフランスが似合うと思うのです。
[共感]
2009/02/18 やわらかな言葉遣いでありながら、善悪や道理で割り切れる心の表層の、もっと奥にある、言葉にしがたい領域を言語化する感性を感じる文だと思いました。小川さんの小説を読んでみようと思いました。 by asuka

2007/03/04 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:792(58%) 普通:430(31%) 悪い:147(11%)] / プロバイダ: 18384 ホスト:18446 ブラウザ: 6287
「 薬指の標本 」 と 「 六角形の小部屋 」 の2作品が収録されている文庫を読みましたが、
文章は本当に綺麗だと思いました。
主人公の今までの生活や風景描写などは心に残ります。

しかし、「 薬指の標本 」 での標本室、 「 六角形の小部屋 」 での 「 語り小部屋 」 は、
どのような経緯で作られたのかはっきりとは語られておらず、
またどの程度需要があり、実際問題としては商売として成り立つのかなど、そのあたりに疑問を感じてしまいます。
主人公が標本室に簡単に就職できたり、語り小部屋の方は、そこで働いている ? ミドリさんと偶然知り合ったりしたというところに、
どうも世界に入っていきにくいものがあります。

文章の美しさに惹かれるものがあったので、 「 普通 」 に近い 「 良い 」 にはしますが、
あくまでもファンタジーのような小説としての認識以上のものは感じることはできなかった作品でした。

2006/11/19 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:83(72%) 普通:5(4%) 悪い:27(23%)] / プロバイダ: 30606 ホスト:30431 ブラウザ: 3846
少し、ネタバレを含みます。

海外での評価も高く、いくつもの本が外国語訳されているという芥川賞作家、
そして「博士の愛した数式」の作者でもある小川洋子の短編作品2編のつまった作品。
表題作は、今年フランスで映画化されて少し話題になったようです。
他に「六角形の小部屋」を収録。

さて、この作品、表面上は一応純恋愛系に分類されるんでしょうが、そう思って読んでいくと、
そのストーリーにほんの少しの違和感を持つ事になります。
淡々と流れる日常にぽつぽつと存在するわずかなシミ。
そのシミは、普通「のど元を過ぎれば熱さを忘れる」が如く、あまり気に止まらない物なのですが
物語が進んでいくと、それがある種のズレを生み出すきっかけになります。
そもそも、マンションを改装した標本室という独特の舞台設定が
かなり微妙な温度と湿度を持ったものなのですが。
そこへ運び込まれる物、音の標本、ずっとはき続けてほしいと与えられた靴、キノコの標本・・・・・。
バラバラに散らばったピースは一つの所にまとまるどころか、
その舞台にもやもやとけぶる霧のように拡散していきます。
そして、そのけぶりが辺り一面に広がったときにそこへ映った影を見て気づくのです。
ああ、一般的感覚からいって、この作品は単なる純恋愛なんかじゃない、と。
いや、ある意味では「本当の純愛なのかもしれない」と。
この空気は読んだ方にしか分からないと思います。
喪失が是とされる世界観。
無常が良とされる世界観。
そして、主人公自身がある種の有となる事を切望する・・・・・。
ガラスのような透明感と木造のユーロピアンアンティークの様な妙な懐かしさを持った文章の効果も重なって
「博士の愛した数式」からは全く想像のつかない不気味さを全編にたたえた作品に仕上がっておりました。

「六角形の小部屋」は一転して不気味系というよりもちょっと非日常系の文章。
児童小説にありそうな設定ではありますが、それを大人が演じるとこうなるのかという作品。
表題作よりもこっちの方が好きだ、っていう人もかなり多いと思います。
「博士の」に通ずる所のある、あったかみのあるお話でした。

どちらの作品もかなり完成度は高いと思いました。
僕は、この2作ならどちらかというと「薬指の標本」の方がおすすめですが、
両方とも一読の価値はある物語です。
基準、総評とも「とても良い」と評価します。
映画の方も日本でも公開される(もうされてる?)ようなので、
もし機会があればみてみたいな、と思います。
(そんなこと言いながら結局みないとも思いますが:苦笑)

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記事日時:2007/07/16
2. まぶた/小川洋子 by afterglow
直後感想:☆☆☆★ 「博士愛した数式」からは考えられないようなぞっとする短編集でした。 いや、怖いというか、不気味なんですね。「薬指標本」に近い感じ。 これが本当小川洋子、なでしょうか。 「七つ黒い夢」なんかより、よっぽど黒い夢に満ちた作品でした。
記事日時:2006/11/11 [表示省略記事有(読む)]


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