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屍鬼(小説)


[他形式: RSS/携帯版/English]
読み仮名: しき おのふゆみ / 英語タイトル: SHIKI [Ono Fuyumi]
注意: これは小説版。その他メディアのページ
漫画:屍鬼
総合
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懇談室日記
2008/07/05
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直近発売の本/漫画: 2008/10/03 ():屍鬼 3 (3) (ジャンプコミックス) \460
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1.あれ…
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1998/09
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1.著作に共通するセックス的要素の排除
25029
単行本:屍鬼〈上〉

参考:\2,310
1998/09
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1.長い。。
32670
文庫:屍鬼〈2〉 (新潮文庫)

参考:\700
2002/01
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1.徐々に
56539
文庫:屍鬼〈3〉 (新潮文庫)

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2002/02
()

1.おもしろい!
57893
文庫:屍鬼〈4〉 (新潮文庫)

参考:\780
2002/02
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1.この巻は要らない
62099
文庫:屍鬼〈5〉 (新潮文庫)

参考:\660
2002/02
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1.まだ続きが見たい

コミック:屍鬼 1 (1) (ジャンプコミックス)

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2008/07/04
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1.何だこれ。

コミック:屍鬼 2 (2) (ジャンプコミックス)

参考:\460
2008/07/04
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1.クセはあるけど、良くまとめた!

コミック:屍鬼 3 (3) (ジャンプコミックス)
参考:\460
2008/10/03
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作品紹介(あらすじ)

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。
闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。 (文庫版一巻より抜粋)

作者:小野不由美
出版社:新潮社
単行本(上巻・下巻) 1998年9月発行
文庫版(一〜二巻) 2002年1月発行
文庫版(三〜五巻) 2002年2月発行
発売日:1998/09(日本)
最終変更日:2008/08/10 21:53:04 / 最終変更者:雪霞 / 提案者:遠野 (更新履歴)
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2008/08/09 良いと思う立場からのコメント [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by asuka 評価履歴[良い:20(91%) 普通:1(5%) 悪い:1(5%)] / プロバイダー: 8142 ホスト:7883 ブラウザー: 8901
この作品に受ける感覚、読後の感覚が、なぜか、

どんな生々しい証言よりも臨場感のある「戦争」ものを読んだ、という感じだった。

「戦争」のせの字もない、純粋なホラー・エンタテインメントなのにもかかわらず。



膨大な前半一冊で描いたのは、虫送りをして、

穢れをソトに焼き祓い、ウチの安泰を願う、

同胞の不幸と死に同情的な衝撃と痛みを感じ、悼む、

どこにでもある日本の共同体、和やかな村社会の風景。

小野さんは、この「なんでもない」日本の日常風景、

平均的な、誰も突出しない、共同体と自己が一致して連動しているかのような、

一人一人の心理描写がすごく巧い。



日本の閉塞的な村社会の嫌らしさを徹底して、これでもかと書いているところは、

精神分析的、批判過多のようにも思いますが、

この作者の筆意として、自国批判としての自己批判、日本風土、

日本風習批判が全編に渡っていると思います。




扉からして、人間の流離と異端の痛みが濃厚に漂ってくる。

人間の本能的な「帰属欲求」と、それが強い分、

その裏面としての、排斥孤立への恐怖を掻き立てられる。

ウチとソト、こちらとあちら、正義と悪、敵と味方、正統と異端、光と闇、マイノリティとマジョリティ、生と死。

国境で線引きし、光輝を囲い込んだ楽園に所属する人間が、自分が帰属するもののために戦う、

人間が最も根本的な戦闘感情を抱く、最も単純な線引きを描いたと思う。



屍鬼とは、人間にとって、正統、マジョリティであることの、ほとんど生物学的な根拠ともいえるもの、

命を持ち、社会的生物として、他者と共同体関係を結び、

他人に許され、自分が存在することの善性、正当性を最低限信じられること、

人間の、生物学的社会的アイデンティティそれさえ喪失した、生物学的人間の国境をも分断されたもの。



屍鬼は、生物学的人間が、社会的動物であることの根拠、

共同体との共存関係から、徹底して孤絶しなければならない。

屍鬼とは、即物的に、生物学的人間から隔絶された、帰還のかなわない、

穢れの烙印を押されたアウトロー、流浪者、異端者なのだ。



命から閉め出された、死。

一度失くしたら還っては来ないという、命の喪失の中から起き上がった屍鬼は、

生と死の、命の国境を渡河し、囲い込まれた生の秩序の中に生きる国を失くした、

圧倒的に異端者であり、究極の亡国放浪者だ。



一度失くしたら、決して還って来ないものを失くし、

しかも喪失したまま、実存し続けなければならない。

命の喪失と自己の実存がイコールしない、散文的な残酷さ。

自己の存在を正当化する余地はない、という自分との齟齬、

自分との分断の苦悩の深さは、眩暈がするほど。



神の御座の、楽園たる命の光輝の摂理と秩序の中に還り、帰還したい、

その望みに執着し、異端の荒野から、穢れた死の闇の手を、

楽園の狭き門に閉ざされた、生の光輝に伸ばさずにはいられない。

命を喪ってでも、自己が在る限り、在り続けたいという、

人間の業の、眩暈がするほどの果てない深さ。



外的、内的裁きを甘んじて受けなければならない、

命に追放された、死としての自己を自覚せざるを得ず、

憧憬と思慕をもって、死が見つめる、永遠に帰還かなわない命の楽園の光輝は、

切り裂かれるように、哀切極まりない。

命は死を拒むしかない。

命を喪失した、持たざるもの、死者である彼らに、自己肯定の余地は一切ない。

また、余地を一切与えないのは、命もてる者、生者でもある。




共同体的他者を否定し、孤絶的にしか、自分が存在できない、

他者の排斥、人殺しを否定されることは、自分の存在を否定されることだという、

自己の存続のために、他者と自己、異端と正統とを隔絶し、排斥しあう、人間と屍鬼とは、

同じ罪業だという、透徹した視線をも注ぐ。

ただ屍鬼である彼らは、開き直れない。

秩序への帰還に焦がされ続ける。

何にもならないとわかっていても、自己弁護と自己弁証せずにいられない。



静信が屍鬼の中に見出したのは、観念や価値観ではない、

もっと肉感な心情で、人間の開き直りきれない、弱くしかいられない、もがきやあがきこそが、

神でも所属する共同体の信念でもなく、一人の人間が心の底に持つ、拠って立つ信じるべきもの。



楽園的命を囲っている人間にはない、自らの異端性と闇を積極的に自覚した、

罪の闇の底の底に見出す人間性という、一抹の救いの光ということかもしれない。

屍鬼は、みんな、人間の闇と業のすべてを背負った、罪の底で、

一抹の救いを見出すための、哀切な殉教者に見えました。




死という命の終わりではなく、命の喪失そのものよりも、

「ここにいる自分」の終わりに際して、

人間が人間であること、自分が自分であることを保つため、

実存的な自己のための戦争に、人間が汲さなければならないさまが、

もっと儚く、痛々しくて、淡く、哀しい。



生と死の、生物学的、即物的な戦争であるがゆえに、

人間のあらゆる戦争感情の根本が描かれていると思う。

命の喪失より、もっと哀しく、儚く喪われてしまうのは、

揺らぐ「自分」の齟齬と喪失であり、「彼」という、一個のパーソナリティーの喪失なのだ。




光が光であるために、秩序が秩序であるために、闇を排し、異端者を排し、

隔離と分断を細分化し、激化するほど、果てには、

光は光自身によって、内部分裂と分断の果てに、自ら瓦解し、滅びる、

という思想の深淵を、アクションエンタテインメントで描いていることのすごさには、

もはや思考が追いつかず、声も言葉もなく、

ただ圧倒的な、怒涛のような筆文に呑まれているしかありませんでした。




隔絶されたウチと、ウチを内包するソトと。隔絶し合った、ウチとソト。

圧倒的な死の闇の中に孤絶する、狭き門を閉ざした光輝の命の楽園は、

死という海に囲まれた日本の地理的なものの隠喩であり、

また、いまだに「神国」日本の風潮、共同体意識を批判視して書いたかもしれない。

日本のDNA的な物語意識を刺激する作品だと思う。



外国人を獣視し、自国内であっても、天皇を「現人神」とし、

人間の差異の間を分断する奔流で、人間と人間を生物学的に隔離してしまうことができる日本の、

というより人間そのものの、最も根源的な感情から飛躍した観念から生じる、

「人間」と「人間に似た、人間でないもの」という不信と敵対感情による、

人間に内在する最も直情的な戦争を描いていると思います。



生物学的人間にとって、特に日本にとっては風土的に、

正統であることとは、多勢であることと、強権であること、

日本が風土的に持つ、共同体の緊密な秩序という、形なき神への依存と畏怖、不信と恐怖。

そのようにがんじがらめになった感情によってこそ、

人々は緊密に結束できたのかもしれない。



楽園のウチに囲われることへの、依存と執心の裏側には、

楽園のソトへ排斥されることへの恐れ、楽園への恐れ、不信と欺瞞、

楽園の光輝が潜在化した、ソトなる、ウチなる異端者、

光と秩序によって、自らのウチなる荒野に潜在化され、

追放された、異端と闇への恐れと不信がある。



国境は、国と国の間にだけ流れているのではなく、

日本、世界、共同体、一人の人間の内部にさえ、

無数の正統と異端、光と闇に分割され、それぞれが排斥し合い、

こんなにも無数の亀裂が縦横に走っており、その間から、

楽園の秩序の光輝によって闇に潜在化させられていた、

不信と恐怖という人間の心の闇が沁みだしている。



人間が人間であることの一つである宗教感情と、本能的な集団への帰属意識、

確固たる正統を信じ、異端を排斥し、光輝たる神に帰属したい、という本能から発する、

人間の中の、光と闇の内部分裂から起こる戦争状態を描いたと思う。



人間こそが屍鬼のように、自らの中に、命の二面性、生と死、

命の楽園の光輝と、異端の死の闇を見つめるのでなければ、

世界はいずれ、正義と異端、生と死、光と闇の細分化の果てに、内部崩壊し、自ら瓦解する、

この作品は、そう警告しているような気がする。

この作品から三年後に、人間の最も直情的な、宗教戦争のようなものが起きたのは、

この作品が持つ、神話的符牒とリアルとの一致のように思えた。



国と国の間、国の中、人と人、一人の人間の中にさえ、

異端と正統の内部分裂の亀裂の流れが奔る。

その齟齬の軋みの果てに、爆発する紛争勃発、

戦争にいたるまでの、一人一人の内面に燻ぶる心情的経過と、

狂的な戦中、荒廃の戦後、その一部始終の流れを徹底して、

人間の心情の内部から、逐一描いたように思います。

個人個人の意識中に潜在し、徹して描きながら、人間という、一個の世界を描いていると思う。




万人の心の闇に潜在化する、命の光に追放された死の闇、カインへの慰撫の祈り、悼み、

光と秩序によって、正と邪、生と死に分裂した、自分自身との戦闘状態、

カインとアベルの、闇による命の統合を描き、

神話や芸術のように、人間の普遍的な物語になったと思う。

純粋なホラー・エンタテインメントを、正面きった、生と死、命を見つめさせ、

哲学的、思想的、生命倫理作品に書ける小野不由美は、只者じゃないと思いました。
2008/06/18 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by マジンマ 評価履歴[良い:92(92%) 普通:4(4%) 悪い:4(4%)] / プロバイダー: 49300 ホスト:49495 ブラウザー: 4984
まず、これから読まれる方へ
このお話は、屍鬼となり、人間を襲う負の存在と、
襲われる人間としての恐怖(ホラー)、
そしてそれに気づき、駆逐しようとする人間の、対決を書いた話ではない、ということ。
その知識を持って尚興味の沸く方のみ、読んでいい作品だと思う
この知識がなく読んだ自分には、とてもじゃないが後味の悪さ、偽善的な終末に不快感を禁じえなかった。

人間の視点で書いていない。

もちろん人間の視点も書いてあるが、
いやでも食料として襲わねばならない、
そして命(この場合命といっていいのかわからないが)あるものとして、生きたいという渇望が人間と同等にある屍鬼の視点と半分半分、いや、終わりから考えると半分以上が人間の敵である屍鬼の視点で話が進む。

善と悪、聖と邪、これらの価値観は相対的なものでしかなく、
人間としての善が、そのまま屍鬼の善とはならない、ということを克明に、嫌というほど書いてある。
人間の、異端者を排除してきた歴史から見るとある種の皮肉とも受け取れる内容である。

人は誰しもが異端者である
その異端を、個性とするか、社会からの逸脱とするかはすべて、法と秩序で判断され、
そこに異論を挟む余地はない。

だが、本当にそれでよいのか
ー良いかどうかを判断するのは社会であり、自分ではないのだがーそれでも

この本を読むと、そういう気持ちになる

一番感銘を受けた部分は、辰巳の台詞
『(屍鬼が生きるためには吸血の行為が必要不可欠であり、単なる摂理なのでそのことで悩む沙子は)愚かだと言う。あなたも言っていたでしょう。

身体は変容しているのに意識が変容していない。それが悲劇だって。
そう思うんですよ、ぼくもね。

沙子が苦しいのは、人ではないもののくせに、人の正義に拘るからです。

正志郎が苦しかったのは、人でしかないくせに、人の正義を拒んでいたからです

人には人の摂理があり、屍鬼には屍鬼の摂理がある。人と屍鬼は異類の生き物なんですよ。同じ価値観を共有できず、同じ秩序を共有はできない。それほど隔たった存在なんです。

---------屍鬼は屍鬼でしかないんです。

腹がすいたら人を狩るんだ。生かしておいたら危険だから、襲った以上は殺したほうがいい。人は人です。屍鬼をののしればいいんだし、怯えればいい。苦しむのは屍鬼という天敵をいただいた人の定めってもんでしょう。

屍鬼でありながら、人であろうとして苦しむ沙子を、ぼくは愚かだと思う。

同様に、人でありながら人であることを拒んで苦しむ正志郎を、ぼくは憐れんできたんです。

そんなことに頓着しない千鶴子は健全なんですよね
--------けれども沙子以上に 愚 か だ 。』

ここまで解っていて尚、この小野不由美という作者は書いているのだ。
不毛だとしか言いようがない。

一元的なものの見方というのが、嫌悪されつつある現在において、この小説の価値は高まるのであろうか。
それとも、解りきったことをくどくどと、と低下するのであろうか。

しかし、自分は-十二国記でもそうだが-このような多元的な見方を書き記す作者は、
小野不由美しか知らない。
2008/04/27 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by hina 評価履歴[良い:17(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 9046 ホスト:8943 ブラウザー: 8090
【良い点】
文章力に圧倒されました。
なにしろ長いので、莫迦な私には1・2冊は大変でした。
しかし3冊目からは一気にスピードが加速し、あっという間に終わってしまいました。
基盤がしっかりしている秀逸な作品だと思います。

【悪い点】
この物語を作る上では仕方ないのかもしれませんが、登場人物が多いですね^^;
名前を覚えるのに結構大変でした。

【総合評価】
「とても良い」です。
いろいろな面で優れている素晴らしい作品だと思います。
2008/04/23 悪い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 才也電卓 評価履歴[良い:101(59%) 普通:47(27%) 悪い:23(13%)] / プロバイダー: 4446 ホスト:4243 ブラウザー: 5234
ハードカバー版2冊目の途中で挫折しました。。
登場人物が多いこと多いこと。
途中でどこの誰がどうなったのかが全然把握できなくなり、しかも吸血鬼ネタだと分かった時点で読む気力が失せてしまった。

最後まで読んでいない数少ない作品の一つ。
2008/03/30 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by asuka 評価履歴[良い:20(91%) 普通:1(5%) 悪い:1(5%)] / プロバイダー: 8142 ホスト:7883 ブラウザー: 8901
小野不由美さんの作品で、一番救いのない作品。

スティーブン・キングファンの小野さんが、キングの「呪われた町」に捧げた異例の作品。

私も一時期、スティーブン・キングにはまったけど、この「屍鬼」は、

―――文庫版の解説で、作家の方がこの作品の魅力を満遍なく的確に語っているように―――

これはキングに捧げられていながらキングを超えた、もうひとつの「呪われた町」だと思う。



ちなみに、ハードカバー本を買って、あまりに面白くてページを繰る手が止められなくなり、一週間くらいで読破しました。

その後、文庫本まで購入してしまいました。

本当に、文庫版で解説の方が仰っていた通りになりました。




「屍鬼」の舞台は、それまでの清冽な印象の小野作品とは一転し、燃え上がるような荒々しい、砂と森と炎。

「屍鬼」とは、死を失くした死者、生を失くした死者、

命を奪わずにはいられない、命を失くした死者。



誰もが屍鬼になるわけではない、「屍鬼」になる条件がある、という設定が面白い。

それははっきりとは明示されず、「親が起き上がると、その子供も起き上がる確率が高い」という曖昧な説明しかない。

だけど、作品を呼んでいくうちに、「屍鬼」になる条件を備えた人間、

という性格が、なんとなくわかってくるのが面白い。

それは、何か遺伝的なことなのかもしれないけど、作品としては、

ある種の「性格」にあるような書き方をしていると思う。



私が思ったのは、屍鬼になる条件を持った人というのは、

心に闇の種を持っていた人、死、以前に、生きることにブレがあった人、

抽象的な言い方をすれば、「死にながら生きている人」という。

作品の中で、登場人物が、屍鬼になったことを、喜びさえする場面がある。

自分は強くなったのだ、解放された、これが本当の自分なのだ、と諸手を上げて歓迎さえする。

それはある意味で、真実なのだ。




自分自身に、生に、不全さを感じ、どこかで自分は本当に生きていない、

という苛立ちを感じさせていた、自分の生を蝕む、内なる死の種子。

自分の生を蝕んでいた、内なる死が生と逆転する。

生きながら死んでいた者の、内なる死が生になる。

生きながら闇に蝕まれていた人の、闇がその者が目覚める光になる。



偽りの生と光の中で、眠り凝っていた、内なる闇が、闇に目覚めて跳梁する時 ―――、

その悲劇と破滅を「屍鬼」は描く。

本当には生きていなかったものが、死んでも本当に死ぬことができず、

死んでも生前と同じ、不完全な生に「起き上がる」、という救いのなさ。

「生きながら死んでいる」が、「死にながら生きている」に逆転しただけでしかない、という残酷さ。

この作品を読んで、人間の業の深さを小野さんは底まで見つめようとして、

未だ底はない、という気がした。



ホラーエンタテインメント、ミステリーエンタテインメントでありながら、「本当の死とは」

「本当に生きる」とは、と問いかける。

本当に生きなかったものが、本当に死ぬことができるのか、人はこの世界の、不完全な生と死の中で、

どうしたら本当の生を、死を、手にすることができるのか。

人の本当の救いは、そこにしかないのに。




屍鬼とは生存することそのものが、他者からの生命の略奪でしか成り立たない。

そのような種族になった本人にとって、自身が生きていること自体が救いがない。

それに慣れて、開き直ることにも救いがない。

生きたい、と願うこと自体が救いがない。

稀に周囲の人間が、そのような形になってでも、「生きて」いて欲しい、

という願いにも、救いがない。



神にでも仏にでもすがりたい、人間の願い祈り自体が、業の深い、

神から人間から拒否される、救いのないものでしかない。

屍鬼にとっての救いとは、「本当の死」を与えることでしかない。

「本当の死」 ――― 自分はここにいる、ここにい続けたいと当然に生存を願う、意識の完全な途絶 ―――

という救いのなさ。

その意識がある意味、エゴともいえるわけだけど。



屍鬼の存在は、自分の命と他者の命を、否応なく天秤にかける。

そして、自分の命が他者の命より重かったとき、屍鬼は生まれる。

その存在の、罪と業。

それに対応して、聖書的な神話物語が同時進行するのがいっそう哀しい。



屍鬼という、人間の天敵となった人間、人間の異端者となった人間の罪業を、人間も、

神も、救うことはできない。

いくら屍鬼を哀れんだとしても、自分の存続のために、屍鬼を殺戮しなければならない闇と業の深さは、

「こちら側」の人間も、屍鬼と等しい。



神は、人間の神であるがゆえに、屍鬼を救うことはできない。

神はまた光であるがゆえに、人間の闇も、救うことはできない。

「屍鬼」と名づけられた、人間の心の闇は、絶対的正義である神にとって、

光の楽園から駆逐するべき異端でしかない。

神は光だから。

光は闇を駆逐するものだから。




何者かに創造されたこの世界の、その何者かとされている造物主の創造物を殺し、

破壊することしかできない人間、という「屍鬼」。

砂子の、静信の、敏夫の、悲鳴のような祈りのようなものは、人間の存在することの意味の、

苦悶の叫びのようだ。

人間そのものが、エゴと破壊の塊でしかない屍鬼であることに苦悶する、人間への世界への、

小野さんの叫びのようだ、と勝手に思う。



私自身は、この作品の一番の恐怖は、自分が起き上がったときに、私は自分に開き直るか、

歓迎さえする一人かもしれない、ということ。

人殺しを拒むことは、自分が死ぬこと。

それをやってのけた登場人物を偽善だと感じることは即座に、

自分が生き延びるために、他者を犠牲にすることを許容する精神に、易々と繋がってしまう怖さ。

神も他人も関係ないという、自分勝手な、人間的な打算でしかない狡さ、偽善。

でも、そこで確かに救われるのは、命なのだ。



911のテロが起きたとき、敵同士であるはずの、あちら側もこちら側も、どちらも絶対的正義を標榜して同じ言葉、

「異教徒との聖なる闘い」を掲げたとき、まるで、この作品が体現した恐怖が、屍鬼のように、リアルに侵食したかのようだった。

屍鬼だろうと、人間だろうと、判断を神に、誰かに委ねることの疑問。




神は、彼らを許さない。

人間も、彼らを許さない。

人も神も、彼らには、許しも光も、与えられないのだろう。

だけど、この世界にたった一人、同じ祈りの言葉を持っている人がいるかもしれない。

それが、救いになるわけでもない、ささやかな慰めか、

そんなもの、体のいい犠牲者に堕すだけかもしれない。

だけど、闇の闇の底の砂子の心にその言葉が届いて、ほんのわずかの涙を流すとき、

炎と砂で干上がった心の闇に、束の間、命がほの見えた気がする。




神ではなく、人が人にできることの、あまりもの小ささ、

人の手は、圧倒的な闇の中に、月光のような、ほんの小さな灯りを灯すことくらいしかできない。

その瞬間に魂の闇に閃く、束の間の光、人の命の光。

この作品の描く、心の闇の中に束の間閃く、痛ましいほど尊い、人の心の光。

人間の闇と光。

それが、世界の、物語の、全てなのだと思う。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

だれもお前に教えてくれなかったのか?

見知らぬ人を招いてもいいのは、食事の方だ。

死ではないのだよ。

かれは唄をうたうだろう。

ある日、おれも招かれた。

だけど、ともに生きようとはいわれなかったぞ。

いっしょに死のうと誘われたんだ。

そんなふうに、うたうだろう。



誰もその死の村を忘れることはないだろう。

かれらはみんなで、死の村の人々が農場の畑にさえも死を植えた、とうたうだろう。

畑にまで死を植えたのだから、収穫のときは死を刈り入れる、と。



だけど、こういう死はひどい、とかれらはいった。

こんな死はなにかべつのものだぞ。

人間ってのは、きちんと死ぬべきものだからな。

これはいったいどんな死なんだろう、ちっとも手を休めることをしない死なんてはじめてだ。

これはどんな死なんだろう、まったく恥知らずの死ではないか ?

とかれらはいぶかしんだ。

「影たち」チェンジェライ・ホーヴェ
2007/06/21 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 波乗りジョニー 評価履歴[良い:10(36%) 普通:6(21%) 悪い:12(43%)] / プロバイダー: 20820 ホスト:20902 ブラウザー: 6287
上下巻あわせて1300ページ超というとてつもないページ数をほこる本作。私は読破するのに3ヵ月半かかりました。

屍鬼が人間を襲い、襲われた人間は屍鬼として起き上がり、血を求め人間を襲う・・・。徐々に蝕まれていくひとつの小さな村。果たして人間は屍鬼に打ち勝つことが出来るのか。

最初のほうは、なかなか展開が進まず、正直言って退屈でした。難しい語句も多いですし。ここで挫折する人も多いみたいですね。しかし、この作品はここからが真骨頂です。死者が増大してきて、屍鬼の存在が徐々に明るみに出てきてからは次が気になり、全く退屈しませんでした。主要人物が屍鬼に襲われて死亡したり、屍鬼としておきあがった場面では、唖然としましたね。最期の人間VS屍鬼の頂上決戦、直接対決は手に汗を握るほどでした。非常に面白い作品でした。
2007/04/15 普通 [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 月夜の兎 評価履歴[良い:102(68%) 普通:29(19%) 悪い:18(12%)] / プロバイダー: 50140 ホスト:50015 ブラウザー: 6287
人物設定(生い立ち・性格)と、物語開始時点からの行動(タイムスケジュール)を村人全員分作成してから
書かれたというこの作品。それだけの準備をした上で丹念に丹念に描かれていく日常描写には確かに作者の
意欲を感じます。何気ない日々と、その中に少しずつ混ぜ込まれていく歪みや違和感、主要人物の一人である
医者の元に持ち込まれる奇妙な症例、じりじりと増えていく死者…この辺りはホラーというより日常に潜み得る
恐怖(作中人物が疑うような未知の伝染病など)です。ただ、この部分が退屈で脱落していく人が多いという
のもまた事実。もう少しテンポ良く進められなかったのか…というのがこの作品において残念に思う点の一つ
です。そこが魅力、という面も確かにあるのですが感情移入できそうな人物が軒並み死亡か悲惨な運命になって
しまうのがなんとも…

後半では真実が明らかになり、人間側の反撃が始まりますが、この"恐怖に支配された人間"の行動が残虐で、
「吸血鬼が退治されてめでたしめでたし」という話にはなり得ません。この作品で吸血鬼と人間どちらが怖いかと
聞かれれば間違いなく人間の方が怖い、と感じるでしょう。この掃討作戦に参加した村の人々も、もう決して
かつてのような心の平穏を手に入れることは出来ないのです。
なんとも読後感が苦く、私にとっては再読する気になれない作品です。
2006/12/02 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by Reason 評価履歴[良い:17(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 13924 ホスト:13893 ブラウザー: 4184
吸血鬼ものとしては、アン・ライスの『ヴァンパイヤ、レスタト』シリーズ(『夜明けのヴァンパイヤ』他)、ナンシー・A・コリンズの『ミッドナイト・ブルー』シリーズ、国内では菊池秀行『吸血鬼ハンターD』シリーズと秀作に事欠かないが、この『屍鬼』もストーリー展開、キャラクターの描き込みともに読み応えのある一作となっており、この作者にはホラー物というより伝奇ミステリーものとして『黒祠の島』があるが、ホラー物をもう少し読みたいと思わせるできです。
2006/11/29 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 評価履歴[良い:147(92%) 普通:7(4%) 悪い:6(4%)] / プロバイダー: 7283 ホスト:7376 ブラウザー: 5234
悪霊シリーズ、十二国記、ちょっと前後するけど緑の我が家(グリーンホームの・・・あたりは視界に入ってなかった、残念)、と
はまり込んでいた作者の作品だったので、非常に期待して待ちわびて読みました。
期待した分以上の見返りをいただいた作品です。
とにかく残酷だった。恐ろしさが一定方向に吹いていたのがいったん凪になり、
逆側に吹き始めた時の切ないような苦しいような気持ちは筆舌に尽くしがたい。
とにかく人間のほうが、怖いんだな・・・と思った。
吸血鬼なんてちょろい・・・ちょろいよ・・・と思った・・・。

長いけど、読み切ったらそれ分の見返りは来る話だと思います。きついけど。
もしかしたら欲しくない、見返りかもしれないけど。
2006/11/02 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by (个_个) 評価履歴[良い:54(84%) 普通:7(11%) 悪い:3(5%)] / プロバイダー: 8516 ホスト:8658 ブラウザー: 5234
小野不由美の最高傑作だと思います。

かなりの長編で、しかも序盤は田舎町の日常描写がだらだらと続くので、そこで挫折するよう方が多いようです。しかし、それは著者の計算ですから、これから読む人はそこを乗り越えてください。

といっても、日常の光の中に時折差し込む影のような、そんな不安要素が序盤からちらちらと表れるので、しっかり読んでいれば先が気になるはずです。
そして夏至から冬至にかけて、夜の長さが伸びてゆくかのように、徐々に日常を侵食する影。
そしてついに、その光と影の立場が逆転した時、引き起こされるカタストロフィ。

序盤の退屈な日常描写があったからこそ、それが変容して行き、崩壊する様がよりいっそう際立っています。
その緻密に計算された展開がとにかくすばらしい。

蛇足ですが、ジャンルを知らずに読み始めたため、作中の医者と同じ苦悩を味わいました。
あまりにリアルで細かなな日常描写のため、まさか原因がそっちへ転ぶとは思わず・・・。頭の中ではもうそれ以外の原因がないと思いつつも、科学的解決が成されるものだと信じていたので、良い意味でショッキングでした。きっと作中の医者も自分で結論を出しておきながら、笑い出したい気分だったでしょう。

後で知ったところによると、S.Kingの「呪われた街」へのオマージュだそうではないですか。
最初からそれを知っていれば、一目瞭然です。
2006/09/04 良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by カジキマグロ 評価履歴[良い:47(71%) 普通:14(21%) 悪い:5(8%)] / プロバイダー: 39099 ホスト:38884 ブラウザー: 3874
だいぶ前に読みましたが、先が気になる展開、登場人物に関する細かい事情など読み手を引き込ませる内容が印象的でした。
正体が分からないうちは、それこそ気になってどんどん読んでしまいましたが、判明してからは少し冷めました。
判明してから追い込んでいく様は、また盛り上がりが良かったように感じますけどね。5冊はちょっと多いけど、ホラーが好きな方にはお勧めしたい作品です。
2006/08/21 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 青空 評価履歴[良い:32(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 20030 ホスト:19840 ブラウザー: 4184
生きることの悲哀。 神に見捨てられるとは、どういうことなのか。
屍鬼の指導者・沙子、村の有力者である僧侶と医師、屍鬼として甦った村人たち、家族が友人が屍鬼として自分たちを狙っていると知った村人たち、それぞれが必死で、哀しくて、辛い作品です。
2005/10/25 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by こここ 評価履歴[良い:42(63%) 普通:3(4%) 悪い:22(33%)] / プロバイダー: 10904 ホスト:10723 ブラウザー: 4925
小さな山村の中で起こる吸血鬼と人間の話です。
とても秀逸なホラーですね。
たしかスティーブンキングの吸血鬼の話のオマージュとして書いた話だったはず。

初めは吸血鬼が恐怖の対象となりますが最後のほうではどっちが悪いのか考えさせられます。
長いだけに中だるみしますが最後まで読んで損はしない内容になってます。
2005/10/16 悪い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by らりるれろ 評価履歴[良い:46(41%) 普通:15(13%) 悪い:52(46%)] / プロバイダー: 45970 ホスト:45791 ブラウザー: 5234
第1巻を手にとって読んでみたのですが、途中で読むのを放棄しました。
はじめは十二国記の小野不由美氏の本というので期待していたのですが、読んでいても中々ストーリーが進まなくてイライラしてきました。
あとは体質的な問題ですね。どうも私はホラーというのに魅力を感じられないようです。
[獲得推薦数:1] 2005/10/16 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 遠野 評価履歴[良い:244(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 7995 ホスト:8075 ブラウザー: 4184
非常に綿密に計算され、緻密に構成された、小野不由美の代表作のひとつ。
分類するならば、間違いなくホラーです。けれど読み進めていく内に、それだけの作品ではないな、という印象を受けます。
知らず知らずの内に外堀を埋められるような、フトした瞬間に足元を浚われるような、得体の知れない感覚が妙に生々しい。前半部分の日常描写があまりに何気ないだけに、寧ろ怖さを覚えました。

不安と薄い恐怖にゆっくりと侵食され、気がつけば手に負えない程に肥大化してしまっている。何者かの掌の上で踊らされているのが読者には分かるのだが、それの明確な姿は見えない。見えないうちに、事態はより加速度を増して、滑らかに進んでゆく。

用意周到、というのでしょうか、序盤部分はひたすらに状況の積み重ねです。いちいち覚えていられない程に登場人物も多いのですが、一人一人に、生々しく地に足の着いた描写が為されています。故に視点も頻繁に変わりますが、混乱を来たすこともありません。それだけに後半、医師である敏夫の手により、謎が解かれてゆく様は、正に圧巻。
圧巻、ではあるのですが、スッキリとはしませんでした。謎が解かれる経緯、解かれた後、敏夫の行為は良く言えば現実的で攻撃的、悪く言えば残酷と言えます。
私自身、彼には大いに共感したのですが、終盤、その行為により齎された事態には、それまでとは違った、かたちある恐怖を覚えました。

敏夫に徐々に相対してゆく存在として描かれているのが、僧侶であり、小説家である静信。本作は主に、この二人を軸にして展開されています。
静信の立ち位置は、敏夫たち人間側から、闇に蠢くもの――屍鬼にスライドしてゆきます。彼の屍鬼に対する思考は、理解し咀嚼することはできるけれど、共感は出来ませんでした。利己を欠き過ぎているイメージ、とでもいうのでしょうか。彼の精神はあまりにも遠い。…そう云う思考が出来れば良いな、という思いも、無い訳ではないのですが。
隔たってゆく二人の描写は、切なく辛い。屍鬼たちが時折こぼす優しさも同時に、また。

登場人物が多い分、それなりにお気に入りのキャラクターや、好感を持てるキャラクターも居たのですが、その多くが死亡、若しくは悲惨な末路を遂げてしまいました。
小野氏は容赦ない話を書く、という印象がありますが、これはここでも健在。
残酷でグロテスクなシーンが多い中、小さな心遣いや優しさが光りましたが、それは、決して救いにはなりませんでした。

本作は外場、という舞台の構築と進行、破壊を見事にやってのけました。
外場(卒塔婆)というネーミングも面白い。死に取り囲まれ、死者によって始まり、死者を葬り去ることで終焉を迎える。相応しすぎて寧ろあざとい、とも言えなくも無いですが。
やるせなさが強く残りましたが、それに比例して、充足感も強く有りました。ひとつの世界の幕引きを見届けたかなのせしょうか。良作故に為せる業であると思います。

唯一残念だったのが、重要なポジションに立つ、沙子というキャラクター。どうにもいまいち、類型的に見えて仕方がありませんでした。廃屋での静信との会話や、惑う徹への語り掛け等、面白くはあったのですが…何処かで見たことがあるような気がする、というか、目新しさを感じることが出来ません。
その部分が無ければ、評価は『最高』なのですが。惜しい。
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漫画:屍鬼

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