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読み仮名: のぞきこへいじ / 英語タイトル: Nozoki Koheiji
2007/06/03 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by 遠野 評価履歴[良い:244(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 28399 ホスト:28449 ブラウザー: 4184
第16回山本周五郎賞受賞作。生きながらにして死んでいる――一寸五分の隙間から世間を覗く男、小平次を主軸に据え、そこから糸を張り巡らせるように物語は展開してゆきます。
細やかに章分けされ、視点も頻繁に変わる本作。頁が進むにつれ、それぞれの繋がりが、構造が見えてくるのが、何とも愉しい。
「巷説百物語」と関連のある作品ですが、当該作品を知らなくても、読書にさしたる支障はないと思われます。ですが、既読であればその分、より本作を楽しめるのも確か。両作品ともに未読であるならば、「巷説〜」シリーズを先に手に取ることをお勧めします。
作中、さまざまな人物が、生々しく蠢きざわめきますが、中でも主人公である小平次の特殊さ、特異性を顕す筆が凄まじい。京極氏の、鬱々とした人間を描く技量には、常ながら感嘆させられてしまいます。
まさか、あれ程に奇異な人物に、共感を覚えてしまうなんて! 物語が開けるに従って、彼の内面や輪郭が明らかになってゆく頃には、好意と愛着まで感じるように(笑)
思うに――小平次的な要素は、意外と多くの人が隠し持っているものなのかもしれません。けれど、閉じ篭ってしまうわけにはいかないから、分からなくても言葉にして、嘘をついてでも厚みを増して、世間との折り合いをつけているのではないだろうか、自覚の有無は兎も角として――と、ちらりと過ぎってみたりも。
彼を大嫌いだ、薄気味悪いと貶し倒しながらも、決して追い出そうとはしないお塚のキャラクターも、興味深かった。彼女の行動理由、内面は、朧にも理解出来ないのだけれど、徹底的に首尾一貫したその姿勢は、結構好ましかったです。傍から見れば、どうなんだこの夫婦、といったところでしょうが、この二人は結局、この形状に落ち着くものなのだなあ。妙に納得させられてしまいました。
最近、木幡小平次絡みの作品に接する機会があった為、馬蹄や沼、指や蚊帳など、重なるキーワードが出てくる度に、内心にやりとしておりました。それにしても、単行本見開きの北斎の浮世絵も、彼の作品をモチーフにしたものだったとは。美術の教科書等で度々見ていたにも拘らず、頭の端のも上りませんでした……。
鈴木泉三郎の「生きてゐる小平次」、それより制作された同タイトルの映画も、是非に触れてみたい。
登場人物の在りようは陰鬱ですし、展開そのものには、それ程驚かされる事もありませんでした。(彼の設計図は、物語途中で終焉を迎えていますし)
ですが、何かしら侵食されてゆくような小説です。あとを引く、とでも言えば良いのでしょうか。小平次の内面世界は、もしかしたらクセになってしまう代物であるのかもしれません(笑)
廻らされた糸と、登場人物の絡み合いが、秀逸な小説でした。随分前に読んだきり、記憶もあやふやな「巷説〜」シリーズも、早いところ読みかえしてしまわねば。
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