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プリズンの満月(小説)(日付順)


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読み仮名: ぷりずんのまんげつ / 英語タイトル: Moon Of Prizun
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2008/06/21 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 634 評価履歴[良い:1405(50%) 普通:548(19%) 悪い:858(31%)] / プロバイダー: 10414 ホスト:10574 ブラウザー: 6342
ある刑務官の退職から物語が始まり、第二の人生を歩んで何年か後に、過去を辿る・・・という作品でした。
作者のこういった刑務所を題材にしたお話しは『破獄』や『赤い人』というものが代表的ですが、それらに比べ、生々しさは多少は緩和されていますが、そう言う点では読みやすくかつ、いろいろとイメージも沸いてくるものがありました。

【良い点】
赤い人や破獄ではあまりにも生々しく、読んでいて辛いシーンも多いのですが、本作ではそういったエグイ(というのは、文学には似つかわしくない表現だけど)描写は抑えめになっています。そのために読みやすく、終始穏やかな調子で進んでいくので、中身に関して言えば、一番万人向けです。

戦後の軍事裁判や、連合軍の理不尽な仕打ちというのが、当時から問題視されており、その問題点や、日本側の不満についても、いろいろと語られていましたが、そういった描き方が淡々としていて、あまり日本側に突っ込みすぎた内容にはなってはいませんし、当時の日本側の事情や、米側や、GHQ事情というものもいろいろと見えてきましたし、戦後の混乱期と治安状況なども見えてきます。

これが、最近の作風だったら、「GHQの思想教育!!」とか、「極東軍事裁判許すまじ!!」というものが余計に入り込みすぎてしまうのでしょうが、そういう思想みたいなものがないので、ヒステリックにならずに見ることが出来るのも安心できるし、こういう一歩退いた視点で物事を見るのは大切だというのも実感できそうです。

ただ、淡々としていて、波風が立つシーンもあるにはあるのですが、それも比較的平穏に片付けられていて、あまり盛り上がると言ったシーンは無いという感じです。

【悪い点】
知っている人には興味があるのでしょうし、中身については、作者の綿密な取材だけに、読んでいて内容を裏切らないのですが、タイトルに期待が大きすぎたのでは?と思えそうなものがあります。

プリズンという単語で真っ先に思い浮かぶのは巣鴨プリズンなのですが、そこで語られていた暗黒の歴史・・・という実態に迫ろうかと思いきや、あまりそういった部分に突っ込んでいない感じもします。まあ、多くの釈放された受刑者にしろ、戦犯だった人にしろ、筆舌し難いダメージを受けたりで、多くを語りたくなかったという部分もあるのかも知れませんが、タイトルに作品内容が及ばなかったようにも思えます。

そして、戦後秘史に迫ろうかという迫真のものなのかと思ったらそうでもないし、そういう意味では盛り上がりに欠けるような内容だったと思うし、そういったものに興味がなければ飽きてしまい、途中で・・・・・・というものになっていそうです。

まあ、「事実は小説より奇なり」なのだし、実際は案外あっさり、もっさりと、というケースで片付けられることが多いのも事実なのだし、そういう部分で考察してみれば、戦後処理にしろ、戦犯の獄中での姿にしろ、そして、終わる時にしろ、終始一波乱はあっても、それだけ・・・という形で終わってしまう事も多いと思います。

かの戦国の覇王も、50年に若干届かなかった人生を終える時に「是否も無し」と言いましたが、そういったドラマチックさがいろいろと強調されているのが、こういったドキュメント小説や歴史小説にも多くあるので、作風上、その点はやむを得ないと言えばやむを得ないのかも知れません。

【総合評価】
戦後秘史と、巣鴨に関わり、携わった人々の人生が・・・という哀愁が満ちている作品でした。中の様子よりも、周囲や、その中で生きてきた刑務官側の視点が中心で描かれている感じです。そのせいか、破獄や赤い人のようなえげつなさのようなものはあまり感じません。

その為に、他の作者作品よりも、若干、物足りない印象も無いわけではありませんが、穏やかな老後を送る元刑務官の語りたくはなさそうな過去にしろ、人はみんな多くの過去に少なからず傷を持っているというところに、就職難の現代にも通じるような深いテーマとメッセージも感じられた部分もありました。熟年の人達が、いろいろと、苦労してきた人生について、とやかく言えないし、また、聞きたいとも思えないし、そんな人々の秘史という部分が、比較的穏やかな書体で出ていたと思います。

しかし、今の時代にも通じる戦後の混乱期と、理不尽に社会の闇に葬り去られて人々と、戦犯という人々の意味を色々な意味で考えさせてくれたのも事実です。戦争は許せない犯罪であり、そこで蛮行を働いたことは、戦勝国だろうと、敗戦国だろうと許される事ではありませんが、そういった不条理な部分や、理不尽な視点も描いていたし、戦犯と呼ばれた人々の扱いと、GHQや、今尚、米軍基地が日本中にのしかかっている問題というものの解決方法のようなものも描かれていたようにも思えます。

また、吉田内閣の負の部分も語られていて(時代世情とはいえGHQにベッタリで、こういった戦犯や、その親類や関係者に対する配慮は、文字通り見捨てていた感じだったし、米側にはともかく、本来の主権者たる日本国民への配慮もあまり感じられない)、そういった政治のマイナス面も捉えていたし、色々な意味で考えさせてくれた作品でした。

そういった中で生き続け、ようやく仕事を終わって、老後を過ごす主人公達の姿は、現代日本に、何を訴えかけるのだろうか。
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