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きつねのはなし(小説)


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英語タイトル: Kitsune no hanashi
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(本/漫画)
直近発売の本/漫画: 2006/10/28 ():きつねのはなし \1,470
本/漫画(1件)
売上/新着
68052
単行本:きつねのはなし

参考:\1,470
2006/10/28
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1.ホラーとは一線を画する
作品紹介(あらすじ)

細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは何だったのか――。『小説新潮』掲載の表題作ほか、妖しくも美しい奇譚全4篇を収録する。 (Amazon「MARC」データベースより)

著者:森見登美彦
出版社:新潮社
掲載誌:小説新潮2004年3月号
掲載時のタイトルは「きつねの話」 他3作品は書き下ろしです。
発売日:2006/10/30(日本)
最終変更日:2007/05/21 22:43:41 / 最終変更者:遠野 / 提案者:遠野 (更新履歴)
評価統計(1日1回定時に更新)
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2007/05/22 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by 遠野 評価履歴[良い:241(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 28399 ホスト:28449 ブラウザー: 4184
京都の古道具屋、廃墟、路地、旧い屋敷――暗がりからふわりと拡がるような、4つの物語たちです。
連作短編集のようで、そうではない。共通するキーワードはあれど、関連があるわけではない。次の編に移ったとたん、スライドする設定に惑わされること、しばし。それぞれがそれぞれに、影をさしかけるように影響しあい、一冊の中に不思議な世界を構築しています。

表題作である「きつねのはなし」は、骨董屋「芳蓮堂」のアルバイト学生が遭遇する怪異を描いた編。
京都の町や骨董品の持つ古色然とした美しさと、得体の知れぬ気味悪さが違和感なく同居する。舞台における陰影の使い方も巧み、いつかどこかで聞いた、怪談を思わせるつくりです。
また、骨董屋の主人であるナツメさんが匂わせるささやかな、常暗い竹林を屋敷の裏手に持つ天城さんの、あからさまな妖しさの質感が、非常に優れていました。言葉ひとつの遣り取りをきっかけに、じわりじわりと悪くなってゆく状況が、ほんのりと怖い。
いやでいやで堪らなくなってゆく主人公の心理が、私自身に容易く重なり、妙な居心地の悪さを感じてしまいました。しかしそれも、物語に惹きこまれる要因の一つになっていたりもするのです。
物語は一応の解決を見ますが、閉じるに当たって謎としこりを残します。けれどその妖しさ、あてどなさもまた良い。

謎めいた先輩の部屋に通う、男子学生の視点より紡がれた「果実の中の龍」。収録作品中、もっとも好みな編でした。人間の心の揺らぎや歪み、やわらかに表出されるそれらが、とても切ない。
先輩が語る、不可思議な経験や豊富な知識に身を乗り出し、彼の住まう空間(二部屋借りたアパートの一室を図書室にしてしまうなんて、なんたる贅沢! )の不可思議な居心地の良さに、のめりこんだり。前編との共通項と、それに伴うズレに首を傾げつつ、淡々と進行しながらも、水面下で変わってゆく状況に、予感を覚えたり。
明かされた真実は、ほのかに恐ろしく、淡く痛い。つまらない人間だ、と落としてしまう心理が、凄く良く解ってしまうだけに、どうしようもなく悲しい。
ただ、この編も、虚構と虚構でないもののラインが曖昧で、やっぱり掴み難い。かっちりと決着しない曖昧さに、引っ張られてしまいます。

酒屋にて家庭教師のアルバイトをする大学生の「魔」。ひたりひたりと、押し寄せるような編でした。
不確かで不定形だった不安が、形を成してゆくさまに、内側で膨らんでゆく恐れ――ただし、怪異に対する恐怖ではなく、懸念の具現化に伴う恐怖、ではあったのですけれど。
路地裏を放浪してしまう主人公に、これまた共感してしまいます。「横に伸びた路地は神秘的に見えた。(中略)その奥へ入って行くと、そのまま迷って出られなくなるような気がした」の一連に、ああ、と頷いたりも。
そういえば、読み返してみれば序盤の6行は、主人公の視点であり、また、そうでもなく。終わりと序盤の繋ぎも、巧みです。

謎めいた一族の物語「水神」。暗闇の中の幻想も、鮮やかな編です。
祖父の通夜に集う青年と、彼の父と叔父たちが遭遇する、一夜の怪異。泉鏡花が好きな人に、お勧めしたい作品です。ぐぐっと嵌ってしまう要素が、散りばめられている風なのです。
過去と現在が、記憶と現況、口伝えの記述がランダムに交錯する。道筋を見失うことは無いのだけれど、絡め取られるように翻弄されていく感覚を覚えてしまいます。
この屋敷に秘されていたモノは何なのか、一体過去に何が起こったのか、彼らが遭遇した怪異は一体――明かされることのない謎をあげれば、きりがないのだけれど、それでも物語が落ち着くところに落ち着いている、明瞭な夢のような一夜の出来事でした。夜が明けたのちの、零れるようなラストも印象的です。

京都在住の方、また、京都が好きな方には、堪らない小説ではないでしょうか。地図を指でなぞりながら、頁を捲るのも楽しそうです。
森見登美彦の著作を読むのは、これが一冊目。聞くところによれば、著者の作品の中でも本作は、異色なのだとか。作風の違う他作品はどのようなものなのか、とても気になります。
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