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読み仮名: うみべのかふか / 英語タイトル: Kafka on the Shore
[獲得推薦数:1] 2006/08/10 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by SOUTA 評価履歴[良い:143(57%) 普通:47(19%) 悪い:60(24%)] / プロバイダー: 4550 ホスト:4384 ブラウザー: 6342
15歳の誕生日に家を出た少年・田村カフカと、引き寄せられるように西へ向かう猫探しの老人・ナカタさんの、二つの話が交互に展開します。理解するよりも感じるタイプの小説なので捉え方も様々でしょうが、私は、主人公であるカフカ少年の成長していく様が、ファンタジー風に描かれた物語・・・・・と解釈しました。
本作ではその成長プロセスが、多分に駆使された“メタファー"によって表現されています。例えば「予言」、「深い森」、「入り口の石」など、これらはほんの一例ですが、作中のほとんどの事象が“メタファー"であり、現実と想像の世界の境界線は極めて希薄です。ここまで徹底していると、奥深さを通り越して読み手に不親切な印象すら受けますが、これは“世界の不安定さ"を象徴していたのではないでしょうか。だからこそ、一見幻想的に見えるストーリーの中に挿入された、普遍的な“真実"に私は胸を打たれましたし、また、“少年の成長"というテーマ(の一つ)とも見事に調和したのだと思います。
キャラクターも非常に魅力的。恐怖や苦悩と真っ向から向き合おうとするカフカ少年、知的能力はないが悪意や打算とは無縁の柔和なナカタさん、彼に無償で同行する素直で気取らない星野青年、鋭い感性と豊潤な知性を併せ持つ少し“特別"な大島さん、美しいが世界に存在していない様な儚さを漂わせる佐伯さん・・・など、各々の個性がストーリーの拡がりを担います。ナカタさんと星野青年の体温の高さ、また、「他人の気持ちは“理解"できないまでも、“想像"することで少しは他人に近付けるかも知れない」という姿勢など、これらは従来の春樹作品では見られなかったキャラクター造形で新鮮に感じました。
ラストも、キャラクターが虚無感を抱えたまま終わるのではなく、生きる方へと誘われるハッピーエンド。空しさや寂しさが残る今までの結末は違い、静かに心に沁みる希望の美しさに思わず胸が熱くなりました。“生"を肯定した村上春樹を読みたい方には、是非オススメしたい作品です。・・・投げっ放しの謎もありましたが、“うつろな人間"にならない為に、想像力を発揮して自分だけの解答を導き出すのも本作の楽しみ方の一つなのかも知れません。
「ことばで説明してもそこにあるものを正しく伝えることはできないから。本当の答えというのはことばにはできないものだから」
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