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黒馬物語(小説)


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読み仮名: くろうまものがたり / 英語タイトル: Black Beauty
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海外映画:ブラック・ビューティー/黒馬物語
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(本/漫画)
直近発売の本/漫画: 1987/05 ()黒馬物語 (岩波少年文庫 (2011)) \714
本/漫画(1件)
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単行本:黒馬物語 (岩波少年文庫 (2011))
参考:\714
1987/05
()
作品紹介(あらすじ)

19世紀末のイギリス。
グレイ農場でつややかな美しい毛並みを持つ黒馬(ブラック・ビューティー)が生まれた。
やがて彼は、生まれ育った農場や懐かしい母親の元を離れ、広い世の中で様々な体験をする。
ブラック・ビューティー自身が第一人称で語る自叙伝スタイルを取っており、人生の喜びと悲しみ、愛と真実を綴った感動的な物語である。

原作:アンナ・シュウエル
日本語翻訳:土井すぎの本田増次郎安藤貞雄白石佑光足沢良子成瀬武史、他
出版社:岩波書店内外出版協会学生社新潮社ぎょうせい日本英語教育協会、他
発売日:1877(日本)
最終変更日:2008/03/02 04:37:39 / 最終変更者:TCC / 提案者:えぼだいのひらき (更新履歴)
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2007/09/23 最高! [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/これだけ表示or共感/納得コメント投稿/]
by えぼだいのひらき 評価履歴[良い:120(71%) 普通:36(21%) 悪い:12(7%)] / プロバイダー: 1434 ホスト:1325 ブラウザー: 8643
児童文学としては極めて質の高い作品で、大人の方がお読みになっても少しも物足りなさを感じない素晴らしい作品だと思います。
様々な会社から、多くの方の翻訳で発売されています(情報として挙げたのは、我が家にある本達です)が、どれも殆ど内容に違いはありません。細かい違いは、物語の語り手であるブラック・ビューティー自身の第一人称が「私」か「僕」、文章形態が「敬体文」か「常体文」である事位だと思いますので、どの本であっても読んで戴ければ、本作の魅力はご理解戴ける事と思います。

舞台は19世紀末のイギリスです。
当時、ウマは人間にとってなくてはならない存在でした。しかし、それは現代とは違い、趣味や学術的なものに支えられた存在ではなく、生活に密着した働き手であった為、必ずしも彼等に対して愛情を注いでいた人間ばかりではありませんでした。
作者のシュウエルは本作を通じて、ウマ達の置かれた厳しい状況だけでなく、貧しい人達や弱い立場の人達の境遇についても詳しく語っています。つまらない見栄や流行の為にイタズラにウマ達を苦しめる富める存在である貴族達に厳しい目を向ける一方で、苦しい生活の手段としてウマ達に厳しい労働や環境を強いる事を余儀なくされている弱い立場の人達には哀れみの目を向け、現状をきちんと書き記し、問題提起を行っています。
事実、敬謙なクリスチャンであった彼女は、そんな人々とウマ達の為に終生働きかけていたと聞きます。

シュウエルは幼い時に雨の坂道で転倒し、一生病身で過ごす事になってからは移動手段として馬車を御する事がとても多かったのだそうです。彼女はウマ達に対して決してムチや上げ綱(馬車を引くウマの首を高く上げておく為の手綱の事)を使用する事はなく、まるで人間に接するかの様に絶えず話しかけていたと語り継がれています。
そのやり取りは物語の随所にも盛り込まれており、特に手綱を操作しなくともいつもの道にくるりと首を回して曲がろうをした小馬の描写等は、シュウエルが道を間違えた自分の馬に対し「今日はこっちに曲がらなくても良かったのよ」と話して聞かせていたと言われるエピソードそのものでしょうし、場面場面でビューティーの主人になる人達が、社会的に弱い立場の人達の境遇を目の当たりにした時に、本来なら人間の言葉の解らない彼に向かって独り言の様に呟くシーンでも判ると思います。
シュウエルはウマの目を通して現実を語り、実は人って他人の目からはこう見えているのだと、そしてそれを直接口に出す人はあまりいないのだと、間接的に語っている何ともステキな作品であると思います。言葉を額面的にしか取れなかった子供の頃と違って、物事を少々斜めから見る大人になってから再読すると、そんな部分にも大いに共感出来て、本作の完成度の高さに驚きます。

又、シュウエルのウマに対する知識はかなりのものであり、作中にはイギリス原産のウマ達が沢山登場し、当時の流行等にもきちんと触れています。
主役のブラック・ビューティーやジンジャーは、おそらくアイルランド・ハンター種(若しくは、それに近い品種)、メリーレッグスはウェルシュポニー種、サー・オリバーはハクニー種、ジャスティスはコブ種、ホットスパーはクリーブランド・ベイ種だと思われます。父親が競走馬(=サラブレッド)であるとか、葦毛でふさふさのタテガミと尻尾を持っているとか、尻尾が切り落とされているとか、足が短く体高が低いとか、白斑がない鹿毛とかの描写で品種が特定出来る事も然る事ながら、御し方、装具等についても詳しく語られており、当時の(決して良いとは思えない)流行を窺い知る事が出来ます。

私は幼い頃に本作に出会った後、もう夢中になって様々なウマの本を読みあさりました。当時はネットもない時代でしたけれど、様々な方面から検索する楽しみは勿論ありました。
お陰で、百科事典等はウマの項目だけボロボロになり、あらゆる場所にウマの絵が描かれ、終いには小学生の身でありながら競馬や馬術、果ては食肉の分野に迄、興味を移す様になりました。ウマに纏わる人々の暮らし向き、ことわざ、進化の過程と云った枝葉を広げた興味は留まる事を知らず、それは今でも変わらなくて、「ウマ」と名の付く書物は必ずと言ってもいい程、1度は手に取ります。そうして、どうでも良い知識迄、取り込んで行く訳です。

しかし、これこそが「児童文学」の存在意味だと思うのです。
本作は、細かい伏線を読み取る事の出来ない読者に向けて、解り易く事実を述べ、物事に興味を抱かせると云う役割を見事に果たしています。物事に対して詳しく述べているにも係らず、説明し過ぎていない所が、とてもニクい演出であると思います。そうすればどうしたって興味は湧きます。
と同時に、一方からの目線で言い放つのではなく、必ず「そうしなければならなかった境遇」についてもきちんと記すと云う丁寧な手法が取られています。
実は、これは児童文学においては非常に大事な事で、善悪の判断能力に乏しい子供に一方的で強烈な思想を植え付ける様な事はあってはなりませんから、本作の様な描き方は理想であると思います。

物語の最後で、幸運にもビューティーは安住の地を得る事が出来ますが、彼以外のウマ達の最期は決して明るいものではなく、「家畜とはそもそも何ぞや?」と云う根本的な所でも大いに考えさせられる作品だと思います。
特に、無学(この場合は学歴がないではなく、無教養と云う意味)な人間によって翻弄され、見る影もなく落ちぶれて行ったジンジャーや、人々の不注意によって辛い境遇に陥れられたローリーやキャプテン、流行によって苦しめられるサー・オリバーやマックスやペギー(彼女は後に報われる数少ない例です)と云ったウマ達は、自分の人(馬)生を人に委ねざるを得ない家畜である悲哀を背負っていました。その状況下にある事が、家畜として改良されたウマ達の宿命であるとは言え、どれももう少し周囲の人間が心を配ってやれたのなら、事態は好転、若しくは避けられたものでありましたから、何とも心が痛む描写ではありました。
私個人は、家畜が経済動物である事に関しては比較的シビアな考えをしているのですが、せめて彼等が生きている間は幸せであって欲しいと常々思っています。

余談になりますが、昭和天皇が亡くなられた時、NHKで「皇居」と云う特別番組をやっていたのですが、その時に宮内庁の中の車両班と云う部署について説明するシーンがありました。
車両班には勿論「馬車」とそれを引く「ウマ達」も所属しているのですが、何と彼等にはシュウエルが何度も何度も作品の中でその使用の中止を訴えて来た「上げ綱」が使用されていたのです。
シュウエルが生きていた時代は19世紀です。見た限りでは、無理やり首を上げさせる程のキツい装備ではありませんでしたけれど、1世紀以上経った現在でも、格好を重視し、ウマ達を苦しめている物が使われていた事、そしてそれが遠い異国の地の日本で、外国の要人を接待する部署で未だに行われていた事には、正直な所とても驚きました。
果たして現在のイギリスでは、上げ綱は使用されているのでしょうか?少なくともイギリス王室の馬車では使用されていない様ですが、観光用の馬車とかはどうなのでしょう?日本のウマ文化は欧米諸国に比べて遅れていると言われていますけれど、イギリス原産のウマの中には廃れつつも未だに尻尾を切り落とす習慣が残ってる品種がいますし、アメリカで作り出されたある種類のウマには、尻尾の筋肉を切断して必要以上に高く掲げたり、前の蹄のみにぽっくりの様な蹄鉄を履かせたりする習慣が根強く残っています。愛馬精神が豊かと言われる国なのに、です。
文化とか伝統と言われればそれ迄ですが、何だかそう云うのって、矛盾を感じます。

因みにシュウエルの葬儀の時、棺を引く馬車のウマ達にキツい上げ綱が使用されていたのを見て、母のメアリが彼女の生前の意志を汲み、上げ綱を緩める様申し出たと云う逸話が残っています。
それを知った時、本作をこの世に産み出す為に生きて来たシュウエルの幕引きに最も相応しいエピソードであると思うと、何とも胸が熱くなりました。
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海外映画:ブラック・ビューティー/黒馬物語

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