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[文学]あの紫は―わらべ唄幻想


あのむらさきは わらべうたげんそう / Ano Murasaki ha-warabeuta gensou
文学総合点=平均点x評価数1,041位/3,067作品中(総合3/偏差値49.02) 1,040位<= =>1,042位
1994年文学総合点23位/57作品中 22位<= =>24位

直近発売の本/漫画 1994/05 ())あの紫は―わらべ唄幻想 1,529
本/漫画(1)
売上/新着
845035
単行本:あの紫は―わらべ唄幻想

1,529
1994/05
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評価統計
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評価総合点3.00
文学順位(総合点)1,041位(3,067作品中)
偏差値(総合点)49.02

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作品紹介(あらすじ)

紫の振袖を着て、少女は夕映えの沼に沈んでいった……。それは妖しい夢のように――
わらべ唄をモチーフに展開する、幻想的な八つの皆川ワールド。 (Amazon「BOOK」データベースより)

著者:皆川博子
出版社:実業之日本社
*電子本版がe-novelsでも販売されています。
日本 開始日:1994/05/25(水)
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海外43000
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最終変更日:2006/08/19 / 最終変更者:遠野 / 提案者:遠野 (更新履歴)
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by (表示スキップ) 評価履歴[良い:250(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 7995 ホスト:8085 ブラウザ: 4184
8つのわらべ歌から、拡がり、滴り落ち、湧きあがる、8つの物語。独特の旋律で以って紡がれる、たおやかに艶やかな文章が、美しい幻をかたち造るさまは、溜息もこぼれんばかりです。
モチーフとなった歌から発展する物語、そのすべてが例外なく、優れているのです。イマジネーションが、豊富な色彩を纏い、膨らんでゆくのを感じます。翻る着物の袂の柄が、瞬間のうちに脳裏に焼きつくような、凄まじく強い干渉の力があるように思えてなりません。
端整さと背徳、絢爛と淡い毒。絡み合い、溶けあい、現れたそれぞれの物語。モチーフの歌も、著者の文章も、甲乙付け難いほどに美しい。こころよく読み手を酔わせる、一粒で二度美味しい短編集です。

「薔薇」
水溜りに、開いたまま浸る本、その内に記された西條八十の詩――出だしのシチュエーションから、してやられた感があります。浮き立つような軽やかさがあるのに、塗れた頁を捲ってしまえば、非日常の始まる予感が微かに香る。
九才の少年と、父親の再婚により家族となった、7つ年上の少女。突き放し、傷つけながら愛おしむ、二人の交流から伝染する危うげな雰囲気。繊細さと不安定が絡み合う文体が綾なす世界、明かされる残酷と、訪れるべくして訪れたラストの虚ろが、秀麗な作品です。

「具足の袂に」
舞台は昭和初期か、大正末期でしょうか。なにげない(けれど、とても鮮やかな)少年の午後の描写、そこより覗く、小さな不可思議に、知らず、引きずり込まれてしまいました。
夏の日差し、裏庭の花々の生命力の逞しさ。欝欝とした少年の心理と倦怠すら、場を彩り、のちに続く幻影に、華を添えています。
迷路に招き入れるかのような、謎めいた会話の妙も堪らない。夢が溢れて現を侵すようなラストには、ただ溜息です。

「桜月夜に」
宙に漂う手毬、のくだりが、ぞっとするほどに美しい。暗闇の中に切り取られた青空、そこに錦の糸が流れる、幽玄さと怖さ。認識のある夢である、との、語り手の内述が、閉鎖性と甘美さを、増幅させている風にも思えます。
醒めようとも、醒めようとも、連鎖し続ける夢が放つ、奇妙な幻想性。繰り返し現れる、手毬が何を意味するのか、明かされ、物語が落下してゆくさまが、見事。

「あの紫は」
泉鏡花の詩もさることながら、そこから連想された幻が、凄まじく美麗です。迫り来る夜闇の中に浮かびあがる、白い手首なぞ、本来ならば怪異として捉えられるものだろうに、どうしようもない程に吸引されてしまいます。
わずかに動く指先、子どもが放つ露草の青、紫の影の破片。冒頭の2頁に、どっぷり漬かってしまいました。
がらりと雰囲気の変わる、3頁目からも面白い。手袋や門香の薀蓄など、非常に興味深く読みました。時間に纏わる会話も然り、著者の知識の高さと端整な筆致には、流石だと感ずるばかりです。

詩に絡めた情景描写が、強く映画を思わせる「花折りに」、ラストにて全てが繋がり、再度混沌とするような「睡り流し」も秀作。
繰られた言葉の連なりに、眩暈をおぼえるような一冊でした。単行本の方が絶版となっている事、ひたすらに惜しまれるばかりです。

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