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2006/12/11 普通 [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by HUNGRY SPIDER 評価履歴[良い:173(41%) 普通:69(16%) 悪い:182(43%)] / プロバイダー: 4807 ホスト:4662 ブラウザー: 7395
もう二度と見たくないと思う。
とは言っても、決して完成度が低く、精神衛生上悪いから「見たくない」作品ではない。むしろその逆で、完成度で言うなら相当高い部類に入るだろう(これだけなら最高レベルかも知れない)。しかし…そのレベルの高さ故に怖くなってしまったのだ。とても正視に耐える代物ではなかった。

「YAMATO」や「火垂るの墓」が過去に正面から挑んだ作品だとすれば、本作は8つの短編を通して未来、とりわけ機械文明に同様のアプローチを試みていると思われる。その意味で個人的に最も価値を感じたのは第2話「The Second Renaissance」だ。これは自分の抱く機械文明への猜疑・恐怖とあまりに一致していて驚いている。機械文明の発達による人間の堕落と、それに反比例するように段々性能が上がり、ついには理性や感性まで手に入れる機械。その対比は非常に痛々しく、「自らの便利さと利潤ばかりを追い求める愚かな生物」としての人間の本質に、本作がいかに迫っているか思い知らされるものだ。
そして、自分は以前より強く実感することになる、機械に飲まれてはならないと(自分が一貫してアンチA.I.を貫いているのは、この思想を持っているからだ)。これは、ドラ映画の「ブリキの迷宮」で真摯に問われていたテーマであるが、そこはドラ映画ということもあるのか「ブリキ」は恐怖感を押さえている感じがした。しかし、本作はそれをよりシビアな形で、より真正面から描いている。第8話「Matriculated」では、「機械の基本は人に使われる道具である」と示されているが、この台詞こそ、本作全ての本質に繋がるのではないかと思えてならない。同エピソードでは人も機械も悲劇的な結末を辿るが、それは人が、前提は道具であるという機械の本質を見誤ったからこその末路ではないか。このエピソードにも、上記のこととは質こそ違うが「人間の愚かさ」が現れているように感じられた。

「ところで感情論だけどさ、魂もなく人に似せられて、人並みの感情を持った機械って、哀しいよ。だから「こんな哀しい存在を創ってはならない」って思うんだよな。本作で扱われたA.I.見てて、すっごく胸が痛かったんだ。この作品、機械の悲哀を書き殴ることで機械文明の進歩に警報鳴らしてるに違いない、なんて思えてきたりもする。俺だけかも知れないけどさ。その後の戦争?あれは自業自得でしょ?人の本質を見抜けなかった人類の。本当、愚かだよ…」

…感情的なことはともかく、本作の世界は既出の2作品こそメインだったと思われる。では、残りの6作品はいかがなものだったか。これらは、自分としては「機械世界に生きる人間の人間臭さ」を全面に押し出した作品たちだったように感じている。これらの作品では、よく「流血」していることがその証明だ。流血するということは、心臓の動きによって全身に血液を廻らしている証拠。馬鹿らしいほど当然の事であるが、これほど「血の温かみ」を感じた作品はないかも知れない。流血で温かみを感じるとは、何とも変な話だ。しかし、文字通り「血も涙もない世界」においては、誰もが持っている赤い液体は安心の材料となるらしい。これは視点を変えれば、本作の世界観がいかに徹底して作られた、説得力のあるものかを裏付ける。
個人的には第6話「BEYOND」で、主人公の女の子が血を流すシーンに何とも言えぬ強力な衝撃を受けた。彼女の流血から、その虚構の世界の虚しさを感じ取れたように思えたから。

…ストーリーについてばかり語ったが、映像についても少し。それを言葉にするなら、「壮絶」の一言。グロ映像やかなり際どい描写も少なくはないが、そのCGにより再現された仮想世界は、まさに映像という名の芸術そのものだ。アニメだけで考えれば、本作の映像は最高峰だろう。捉え方によっては「シュール」「電波」と思えなくもないが(自分の精神世界を体現した映像が多かった、とも「勝手に」感じている)。万人受けはしないだろうが、素晴らしいものであることは間違いないだろう。

繰り返すが、本作は映像効果のみならず、ストーリーやテーマ性について言及しても、本当にハイレベルなのである。少しでも、科学技術社会(とりわけA.I.の存在意義)に疑問を持っておられる方は勿論、自分の未来のためにも、本作は是非見ておくべき作品だと感じている。しかし、あまりに内容が重いので、何度も見るには精神的にかなり負担がかかると思われるため、その意味ではオススメできない作品でもある。自分ももう見たくないと思っているので、「火垂るの墓」と同様の理由により評価は「普通」。

しかし俺はしつこく繰り返す、「一度は見ておけ、損はしないから」。

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