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氷菓


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読み仮名: ひょうか / 英語タイトル: You can't escape

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2007/02/18 良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by afterglow 評価履歴[良い:83(72%) 普通:5(4%) 悪い:27(23%)] / プロバイダー: 30606 ホスト:30431 ブラウザー: 3846
角川学園小説大賞の奨励賞を受賞した米澤穂信のデビュー作。
学校を中心に小さな日常の謎を解き明かす彼の原点を垣間みれる作品です。

部員不足で休部中の『伝統ある』古典部に入部した主人公達は、
えるの伯父さんについて、文化祭である『カンヤ祭』について、そして文集『氷菓』のタイトルについて、
という三つの謎に取り組んでいきます。
ちなみに「える」はdeath noteの『L』ではありません(笑)

妙な所で頭の働く省エネ主人公・折木奉太郎(読んでいると、なぜか「ほうき」を連想してしまう)と、
元気印の好奇心お嬢様・千反田える。ヒーローとヒロインの性格がまさしく正反対。
この二人の特徴あるキャラクターがいい意味で妙に混濁して、
作品の根底に広がる独特の空気を見事に演出しています。
特に、彼女の「わたし、気になります」というセリフが象徴的。
その後、折木がやれやれとため息をつきながら重い腰を上げる様が眼に浮かぶようです。
そんで、割とまんざらでもないのが微笑ましいものです。
また、それを支えるサブキャラクターの福部里志、伊原摩耶花も薄味ながらいい感じの塩加減で
絡んできてくれて、物語が非常に映えています。

各短編のつながり具合は、小市民シリーズで言うならば、単発的な「春季限定」よりも繋がっているけど、
大事件を主軸に置く事でごっつい連続性を持たせた「夏期限定」ほど連続したものではないという印象。
それぞれの事件の連続性はそれほどみられないので、もともと事件自体の重要性が薄いという作品の特性上
非常に内容を軽視しがちになってしまいます。
ただ、これが罠な訳で。
ちょいちょい出てくる事件のバックが蜘蛛の糸ほどの細さでかろうじて繋がっているんですね。
しかも、章の数が少ない割に、すべてが最終章へ収束するための伏線というわけではなく、
途中の章に行き着いてしまうものもあり、割と複雑に絡み合っています。
それがすべて解消されたときはちょっとした爽快感がありました。
まぁ、本質的な伏線ではなく、結構物理的な伏線が多いので、インパクトには少し欠ける感じはしますが
「なるほど〜」と唸ってしまう場面もいくつか。

メインの謎解き直前の座談会の雰囲気描写はお見事。
各キャラクターの取り組み具合が微妙に異なる事で生み出されたすこしぐだぐだした感じが
いかにも高校生という印象でした。
まぁ、こういうタイプの活動をする部活を経験した事はないんですが(苦笑)

読み切るまで知らなかったのですが、これ、一種のシリーズ物のようで続刊が出ている模様です。
題名が全く違う所から考えると森博嗣の「S&Mシリーズ」などのようなイメージでしょうか。
次巻以降で手紙でしか登場しなかった姉の活躍があるのか、というのが非常に気になります。

基準評価は「とても良い」。
ただ、作品があとがきまで含めても200ページ余りと、非常に薄くて
ちょっと物足りない感じがありました。
面白い作品だっただけに、もうちょっと濃い味を出しても良かったのではないかなぁ、と。
その辺りをちょっと差し引いて、総評は「とても良い」よりの「良い」とさせていただきます。

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