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ルパン三世 ワルサーP38


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読み仮名: るぱんさんせいわるさーぴーさんじゅうはち / 英語タイトル: RUPANSANSEI WARUSER

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2007/10/08 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by HUNGRY SPIDER 評価履歴[良い:173(41%) 普通:69(16%) 悪い:181(43%)] / プロバイダー: 4807 ホスト:4664 ブラウザー: 7395
この時期のルパンって、何気に豊作だと思わせてくれる(つまり、とても面白かったというわけ)、シリーズのTVスペシャル版第9弾。

シリーズの中では、この作品ほど敵との対決に重きを置いた代物はなかったのではないかな。
序盤から、もうルパン一味と敵対する組織タランチュラが動き出すという、あまりに速すぎる展開は今まで見たことがなかったので、少々面食らったものだ。銭形がワルサーに打たれるという衝撃も然り。そしてシリーズ特有のチェイス(他の交通に迷惑かけまくりの派手なアクションは非常に見応えあり)の直後には既に、敵のアジトに潜入しているという手早さ。その後は、タランチュラ内部に於ける一味の工作と、一味(とそれに味方する組織の人間)とタランチュラの二元的な対立、その中で育まれる「自由」を軸にした人間ドラマ以外、殆ど描かれていないとさえ言える。
余計な枝葉末節を徹底して省き、「一味と組織」という二元的対立の構図のみを突き通すこの作風は、話の中に沢山の寄り道が散りばめられた本シリーズの中にあっては、異例なほどストイックに映るもの。だけど、ストイックだからこその見応えを実現しているところが、この作品の価値ではないだろうか。

本作の中では、いつものギャグさえ「おふざけ」の役割しか果たさない。現に、いつも必ずどこかでふざけるルパンさえも、本作に於いては殆どボケていない。彼がシリーズのピエロ役を買っている面があることを考えれば、本作にはそもそもピエロが存在しないことになる。
入院中の銭形が、その代わりと言わんばかりにギャグのパートを担っていたが、自分の印象からすると、本作の中にギャグを挿入するには、本筋とは関係が持てないキャラを使うしかないという、製作陣側の意図の表れのように思える。ショッキングな形で銭形を戦闘不能としたのは、作品の空気がいかにシビアであるかを伝えるのみならず、シリアス一辺倒の物語が展開されている島に入ることを防ぐ(即ち、彼をギャグ担当にする)ためでもあったのではないか、なんて邪推も成立してしまう(苦笑)。
確かに、作品に格調を与えているという意味では、この判断は正解だったろう。結局、銭形のギャグに笑えたのは、それが本筋と関係ないところで起こってる、謂わば「余興」のようなものだから、というのもあると思う。もっとも、それが面白い(笑える)かどうかは、主観によるものなので一概には判断できない。ちなみに自分はあまり笑えず。

そんな銭形を尻目に、シリアスな運びをしている島の人々の描写はお見事。
悪役が面前に出されている作品としては当然の条件かも知れないが、本作に於ける悪役の存在感は、シリーズ内では他の追随を許さぬものを感じる。銃撃戦、肉弾戦ともに、キャラがとにかくよく動く。この動きの良さが、作品に迫力を与えている。そして、キャラ毎の動きの癖がかなり細かく描かれており、戦闘シーンだけで人物像を確立させていることは重要な美点。だからこそ、彼らはあまり多くを喋らなくても、個性が伝わってくるのだから。台詞に頼り過ぎない構成の技が映える、素晴らしい仕事であると思う。
とりわけ、タランチュラの親玉ゴルドーは、大柄な体躯といかつい風貌に加えて、科学者然とした博識と圧倒的な戦闘力を見せつけ、ボスとしての存在感を強烈にアピールしている。ところが、実は彼が噛ませ犬的な存在だったのには失望。いや、真の黒幕こそ、ルパンの因縁であり、その人物こそが…というのは物語の展開としては面白いのだが、それにしては「噛ませ犬」を丹念に描きすぎた印象があり、そこには作品のバランスの悪さを感じられてしまう。とは言っても、随所で見せる意味ありげなルパン射殺を最後に繋げる構成は、多少のワザとらしさこそ付き纏うが、伏線という点では合格だろう。

善玉の方に目を向けてみると、やはり目に付くのがヒロインのエレナの存在…だけど、彼女の設定自体は、「肉親を失い、自分の意思とは裏腹に組織に従属している」という、シリーズの何処かで見たことがあるような感じのもの。その意味で彼女は「平凡なヒロイン」と呼べるかも知れない。外見的には、結構好きな部類のヒロインだけどね(笑)。
但し、個人を見ればそうであっても、良質の物語がバックグラウンドになってると、平凡は平凡以上の存在になるんだよね。本作では「束縛」の概念が大いに貫かれている。過去に決着をつけるためにやって来たルパンの行動原理でさえ、根源は過去の束縛だろう。その視点からすると、過去に途方もなく深い傷を抱えて葛藤を続けるエレナと、己を束縛する鎖を断ち切らんとするルパンは、ズレてるようでシンクロしてると言えるだろう。きっとルパンの言う、「自由の為にゃ嫌なコトも沢山やんなきゃ…」なる旨の台詞は、自由人を装いながらもそうなりきれない自身が、組織に縛られたエレナとだぶってることから来る悲哀と共感を示してるのかな、と思えたりする。
彼女が段々とルパンに心を開いていく様子は、本当の意味で両者の距離が段々と近付いていることを明確に伝えきっている。彼女の顔つきが柔和になっていくところも然り。そして彼女が死に際、血だらけになりながら見せた笑顔は実に美しい。あれは「自由を得た」から笑ったのではなく、「ルパンの境地に達した」、即ち「完全に自分とルパンがシンクロした」から笑ったのだろう。少なくとも自分には、自由を知るルパンと同じ景色を見ることで、彼の口にしていたものの意味に触れられ、死に掛けた今、やっとその真意がわかったことが嬉しい、といった感じの表情に見えた。
主人公と内的にシンクロしたヒロインは、とっても魅力的です。これは不二子には望むべくもないものだと考えれば、一見すると平凡なヒロインであるエレナは、実に素晴らしい仕事をしたキャラと言えるかな。いや、これはむしろキャラという素材を見事に調理した物語の方を褒めるべきか。
なお、息を引き取ったエレナを前にしたルパンが、叫ばず静かに彼女の躯を抱きしめたことには、感動させていただきました。オトナの渋さと甘さが入り混じる作品の「味」がみれたように思えたから。そして、エレナ役の声優さんが、意味ありげな歌詞に乗せた主題歌を歌っているというのも、作品の作り込みを物語っているかのよう。彼女の歌う「自由」を含むフレーズには胸を打たれましたね。

血が沢山流れ、一味以外は全員が救われずに藻屑と散る、シビアな作りではあるけれど、その中にも感傷的な味わいもある、なかなかの深度を誇る作品。ストイックだからこそ、両者が引き立っているという逆説は面白い。
難点もあるが、久々にとっても満足できた作品ということで、評価は「とても良い」とさせていただきたい。

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