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読み仮名: じょろうぐものことわり / 英語タイトル: Jyorougumo No Kotowari
2006/04/15 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by 遠野 評価履歴[良い:241(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 7995 ホスト:8082 ブラウザー: 4184
京極堂シリーズでは、本作が一番好みです。再読する為に手に取ってみて、その分厚さに最初から疲れてみたりするけれど、読み始めると意外な程、ハイペースに進んでしまいます。
美しい女性が多数登場するからでしょうか、華やいだ雰囲気が良いです。古く、奇妙な屋敷や、桜との取り合わせ方にも惹かれます。
文章表現も、古色を匂わせながら、非常に端麗。織作家を中心とした華やかさと、東京都下の怪しく湿った、薄暗さの対比も鮮やかです。その時代特有の空気が立ち昇るよう。体験した事の無い情景を、とてもリアルだと感じてしまいます。落とし穴のような路地裏の暗闇、連れ込み宿、嘗ての境界線。私事ですが、京極氏の描写は、嗅覚を刺激するものがあるように思えてならないのです。
トリックには只々圧倒されました。複雑怪奇では無いにしろ、事象と事象の組み合わせには、途中で立ち止まって頭の中を整理する必要がありました。こんなものを書き上げてしまえる京極氏には、ひたすら感服してしまいます。
冒頭にラストを持って来ているので、ある程度犯人の目星も付きそうなものなのですが、ものの見事に踊らされてしまいました。整頓すべき内容が多い事、目先の事件にあっさり囚われてしまう事が原因ではないかとも思うのですが、それでも、蜘蛛の縦糸と横糸になぞらえた構成は見事でした。
こんなにも巧く行ってしまうものだろうか、都合が良すぎではないか…と、疑念を挟んでしまうことも有りましたが、それでもずるずると、ラストまで引き摺られてしまいました。精緻な構造が説き解かれてゆく過程には、快感を覚えてしまいます。京極氏の全ての作品に言えることですが、本作はそれが、特に顕著だったように思えました。
解かれて解かれて、たどり着いた終結点から、冒頭へと繋がる、その移行の仕方がとても鮮やか。読み直してみて、深く納得。それにしても桜と彼女、京極堂の一枚絵は素晴らしい。
本作、トリックや登場人物の造形の妙のほかに、女性解放に纏わる云々、キリスト教における女性蔑視等々、興味をそそられる記述が多くありました。特に前者、ひどく偏りがあるなあ、と思いつつも、目から鱗な感覚を覚えたりも。勿論、賛同しかねる部分もありましたが。
登場人物に関しても、明と暗、陰と陽の書き分けが巧みでした。
織作碧の、純粋さとそれに因る歪みの描写には、特に引き込まれました。故に同じフィールドに立つ、呉美由紀のまともさと強かさとの対比が際立ち、それぞれの輪郭を、より明瞭に彫り上げていたように感じました。
木場修と葵の対話にも、それが言えたと思います。まったく異質な素材の対立なのですが、軽妙に面白く、深く馴染んでいる風。噛み合わない様で噛み合う、互いが互いの才を理解しあっているのが良かったです。中盤部分、初顔合わせのシーンは特に気に入りです。
しかし、ラストから冒頭に至る、京極堂と犯人の対比に勝るものも無いのだろうな、とも思ったりも。
そういえば本作、矢鱈と人が殺されていますが、読後感が悪くならないのは何故なのだろう。勿論、学園内で起こった幾つかの事件、エピソードには、強く嫌悪を抱くもの、拒否感情を齎すものもありましたが、読み終えてみればそれも、ひとつのピースとして収まってしまった印象。(実際本作、そういう話でもあるのでしょうが)
今回、再読してみて、内容の密度に満足すると共に、達成感と爽快感も同時に覚えてしまいました。兎に角厚くて重い本書、手を出すのは躊躇ってしまうかもしれませんが、一旦出してしまえば、あとは引きずり込まれること請け合いです。また、一度目と2度目では矢張り、理解度なども変わってくるような気がします。目と頭は疲れてしまいましたが(笑)読んでみて良かったと思っています。
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