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読み仮名: めいたんていほーむず / 英語タイトル: Sherlock Hound
2005/09/05 良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by 島3号 評価履歴[良い:23(96%) 普通:0(0%) 悪い:1(4%)] / プロバイダー: 45497 ホスト:45348 ブラウザー: 6356
何が良いのかと言えば、鉄と蒸気と石畳の近代ヨーロッパに対する宮崎監督の個人的な嗜好と
霧と緑と古城の「ホームズ=ベーカー街」世界観が合致したこと、
そしてそこにコメディ、アクション・エンターテイメントとしてのアニメが見事に融合したことである。
絶対に親子で楽しめる作品だと思う。
この点だけを見ることが出来れば、テレビアニメ作品としては間違いなく最高の評価に値する。
しかし、残念ながらこれは件の六編とその他の若干の例外にのみ限られた事情だ。
御厨監督には大変失礼だが、宮崎監督の手がけたエピソードとその他とのクオリティの差が大きすぎて、
これでは、一連のテレビアニメシリーズ「名探偵ホームズ」として、
原作ホームズファンの不興をかってしまうのもやむをえない。
宮崎監督の描くモリアーティ教授は、なんと言うか、自分に対する誇りみたいなものを持っている。
自己陶酔の偏屈な男ではある、が、逆にそれゆえに抜け作で、振り撒くヘンな愛嬌がキまるのである。
世を騒がす恐ろしい怪人であり、同時に愛すべきエセ紳士なのだ。
対する御厨監督のモリアーティは
はなから分かりきっている失敗を繰り返す道化的性質以外をほとんど持っていない。
しかも、そこには哀しさ、哀愁などは含まれず、やたらに紋切り型の子供受けの良さばかりを押し出してくる。
手下の二人にしても同様で、まとめて悪役三人組にキャラクターとしての厚みと面白みが無い。
ホームズもレストレードも事情は同じで、
ワトソンやミセスハドソンなどに至ってはただの添え物でしかない。
「子供っぽさと楽天性、自分のこだわりを持つヘンな大人」の味は、
先行製作された六編から後には継承されていない。
せっかくの「へんなおとな」の大代表、広川太一郎の声も全く生きていない。
造作の良さという基準において両者の差は歴然であり、
宮崎監督担当の作品にのみ、先の原作ファンの不興を覆すに足るだけの、原作とは異なる魅力が備わっている。
もっとも、結局、本当に小さな子供たちからは御厨監督のスマートなヒーローとしてのホームズと
とっつきやすいモリアーティ一味の方が喜ばれるのかもしれないが。
宮崎監督の「ミセスハドソン誘拐事件」などは全編がとても可愛らしい話で私はとても好きだ。
が、本当にもう徹頭徹尾類型的、おやくそく全開な演出となっている。
「ねらわれた巨大貯金箱」や「青い紅玉」などはただ予定調和でしかなく、
「海底の財宝」や「ドーバー海峡の大空中戦!」などは全くのどたばた劇でしかない。
が、これらは言ってみれば「他愛のないコメディ」というジャンルにおける伝統芸能のようなもので、
むしろ伝統の技芸を破綻なくまとめることの難しさを認め、
それを磨き上げたことの方をこそ賞賛すべきだろう。
あるべきところにあるべきものが必ずある。無駄なものは一切無い。
奇抜な脚本や突飛な演出など無しに、奇跡的な完成度のみで魅せる。
この時期の宮崎監督の手腕はまさに天才的であり芸術的である。
そのままシリーズの製作が順調に進んでいれば多くの人の心に残る素晴らしい作品になっただろうに、
「どろろ」などと同様、まったく残念なことに、舞台裏の事情がそれを中途で台無しにしてしまった。
従って「名探偵ホームズ」は、こと先の六編に限り、素敵な骨董品を愛でる感覚で観てみるのが良いだろう。
漫画や小説で言えば、「宮崎駿短編集」収録の一作品のようなイメージで。
スタジオジブリが徳間書店から自由になり、「興行収入の見込める大作映画」に縛られずともよくなった今、
宮崎監督には、もう一度こういった良質のテレビシリーズを手がけてもらいたいものだ
― と思っちゃったりなんかしたりして。
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