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劇画ヒトラー
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読み仮名: げきがひとらー / 英語タイトル: Gekiga Hitler
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2007/01/20
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愚かな独裁者を描くという手法は本作でだけではないのだけど、戦中派で徴兵され、片腕を失うという生涯に残る傷を負った水木しげるの作風だけに、こういった作品には妙に説得力がある。ヒットラー(こう呼ばせてもらう)は独裁者である以前に、一人の弱い心を持った屈折した劣等感の塊の人間だったという部分は、そういった人間の脆さと姿を出している。
こういう人間はヒットラーだけではない。同時期のスターリンやムッソリーニ、現在の金正日がそうだし、某宗教教団の教祖もこういった人物で、周囲に祭り上げられながら、その実、周囲の人間に脅威を抱き、誰も信じられないという肥大した自我の塊でありつつ、孤独であり、その為に誰かに救いを・・・・・・という部分はあるのだが、屈折している性格故に、自己表現が下手な為に自らの周囲を更に・・・・・・という部分は滑稽にみえるし、哀れもうという気も起きない。むしろ、「こんな奴が同じ人間だと思うと・・・・・・」という嫌悪感が、マトモな、あるいは一般的な思考を持っている人からは出るであろう。
そういった人物を敢えて主人公にし、破滅へと向かっていくという部分を描くのはかなりの冒険であっただろう。そして、まともな精神思考を持っていない、いわゆる精神病患者に、国の舵取りを任せてしまうと・・・・・・といった部分を極めて写実的に描いている。こういった表現方法は、戦中派の水木氏でないと、描けないという部分もあったであろう。
ベルサイユ条約の破棄と、第一次大戦でのドイツ敗北からの立ち上がりに、時代が、民がこの男を選んだ!というのは、選民思想、そしてその場の流れやノリによって好い加減な政治家を選んでしまうと言う危険性を今に伝えているし、日本でも、そういった好い加減な政治家によって・・・・・・というのがあるし、水木氏自身が、戦争へと走っていき、破滅する日本の姿を後に描いたのだし、その愚かな戦争に参加したが故に、生死の境を彷徨ったという経験があるので、余計に説得力がある。
ヒットラー自身の人物像は、マトモではない戦争という世界に身を置いてきた人にしてみれば、「俺もあの時は若かった・・・・・・。」「今の時代の若者達はこういったノリに飛び込んでしまうのだろうか。」とも思うのかも知れない。独裁者である以前に、一人の無力な劣等感の塊の小さな人間(因みに、シークレットブーツも愛用していたと言われる。そして、パーキンソン病であることも隠し通そうとしていた。)だったという人物像を知ることは、世の中にはこういう人間も多いし、そうした人間の弱さが、ヒットラーを通じて描く手法は間違ってはいない。
ナポレオンの失敗を学ばず、ロシア遠征で失敗をし、Uボートに最新機器や整備をさせず、ムザムザ大西洋に沈めてしまったり、バトル・オブ・ブリテンや、アフリカ戦線でも、前線の兵士達への配慮に欠け、ビスマルクやツェッペリンといった海軍戦力の下準備や、その扱いに対するお粗末な手腕故に、有効な兵器を活かせず、ただ消耗だけに走ったのは、最新の戦争資料でも明かであるし、そういった身に余ることをやらせれば、悲劇がブラックな喜劇にもなるというのを、チャップリンの映画のそれとは違うスケールで描いたといっても良いだろう。
そういう部分を考えると、本作の描いた一人の小さなちっぽけな人間によって・・・・・・という危険性と、そういった人物を良い方向に向けさせることが出来るのか?というテーマにも突いている。
自分でも他人でも、人を生かすも殺すも、その人次第であることに、この作品は行き着いたといえそう。
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