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ボクはしたたか君
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読み仮名: ぼくはしたたかくん / 英語タイトル: Boku ha sitataka-kun
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2006/01/05
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羽幌炭鉱
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この作品で思うことなのだが、前作である【奇面組】シリーズと異なる点というものでは、既に上げられている「【奇面組】(特に【ハイスクール!〜】以降)では極力抑えられていた下ネタ的なものを出している事(それでもかなり極力抑えているレベルではあるのだが)」、「笑いをとる形がスラップスティック系の笑い主体だった【奇面組】に対してこちらはネーム(台詞)を多用したコント調の笑いが主体であること」、「長編が主体だった【奇面組】に対して、こちらは一話完結の話が主体で、前作だったら長編になっていてもおかしくなかった運動会や学芸会といったイベント話も一話完結が前後編で終わっていること。唯一の長編(になってしまった)が水越先生の田舎訪問のエピソードだけである事」、そしてもっともよく言われているのが「登場人物の殆どが変態(この場合は常人以上の個性を持った変人)である【奇面組】に対して、こちらはそれが主人公のしたたかやその自称・ライバルであるコタローくらいに抑えられており、それ以外はきわめて常識人(本田原海とかはいってみれば天然)」というものだが、この作品が前作と異なる点において見落とせない点。それは「前作と比べるとナチュラルにブラックで影のある雰囲気を持っている」事ではないのか?
この作品、主人公の流石したたかはその老成した顔のデカ頭に小さい体というアンバランスな風貌はもちろん、身体能力の点では怪力で肺活量は常人の3倍以上のものや人並みはずれた変態力はあるものの体格面や運動能力では他の「常識人連中」には著しく劣り、また性格的にも、赤ん坊のころのアクシデントとはいえ生まれたガラパゴス諸島に1ヶ月ほど置き去りにされて野生化しているところやその風貌がゆえに馬鹿にされ続けていたのであろう、自衛手段的なものだった拳法マニア的なものやそういうのに対して腕力や変態力に物を言わせて屈服させる以外の生き方しか出来なさそうだったほどの不器用かつアンバランスな感じが印象に残る。そしてそんな彼が学校においては学力駄目、運動駄目、芸術関連において何も駄目である上に自分を馬鹿にする周囲とは敵対的に衝突する、いやそうしなければ残酷さをストレートに表に出してくる小学生社会では生きていけないという環境がそうさせたというのは容易に想像させる。彼の所為で迷惑をこうむった兄とは異なって見た目も学力も運動神経も良しという優等生であるあざやかは気の毒でもあるが、それは小学生という時代においては仕方がない事なのかもしれない。
しかしこのしたたかの奇行であるが、小学生の誰もが持っている「駄目な面」をどこか極端にさせたものであり、体格面に劣っているゆえに運動で駄目であるところや学力において散々なところ、そしてコミュニケーション能力の欠如による周囲との関係のまずさなどは、彼ほどではないもののどこか持ち合わせているのではないのだろうか?このしたたかが見せているものは必ずしも極端化させたものでありえない雰囲気にしている事でギャグ漫画として成立させているものの、しかし彼のうまくいかなさ、冴えなさなんかは誰しもがどこか経験しているのではないのだろうか?
そんな彼を取り囲む学校内の面々は、一応"微妙"な関係(敵対的ではないが、必ずしも友好的という感じではない)である本郷やアキラ、ツトム、海といったどちらかというと「あざやかが彼らと仲がいいからつながっている」印象のある面子と、あからさまに敵対関係にある小林や鈴木とその仲間たちという面子、その他大勢の回が進めばもっと登場したのではというその他大勢の面々(足が速いだけの早川とか絵がうまいだけの高橋など)、そして一生懸命だがおっちょこちょいである上に無神経で思慮に欠けた言動が多い水越先生という辺り。これに途中参加のしたたか以上に変態なのではと思わせる佐々木コタロー(彼に比べれば、したたかは家庭的な面や社会性という面ではアドヴァンテージがある)、そして登場したと同時に話が終わってしまった校長の姪の小堺ミカなんてのがそろっていた。途中参加の面々はどちらかというとしたたかと同等かそれ以上の変態、はみ出し者的な存在であり、基本的には天然ボケでありながらしたたかやコタローの存在があるためと容姿の可愛らしさとあまり害がないというところからはみ出し者でなく扱ってもらえている本田原海以外は基本的に常識人である。したたかと基本的に絡むあざやかを含む本郷たちはどちらかというとしたたかやコタロー相手にもその悪いところに対しては(時としてキツく残酷すぎるきらいもあるが)本気で怒り、時としてしたたかたちと一緒に遊ぶ仲ではある。まあ、前例として海みたいなのがいるからそれが出来るのであろうし、こういう関係は本郷があざやかと小学生なのにあまりにも仲がいいカップル(あざやかの兄だからそう悪い事も出来ないし、あざやかが彼らに対してそう根回ししているのであろう)であるのもあるのだが。そんな彼らの中の中核である優等生的な存在である本郷とあざやかですら、時としてはしたたかほどではないのだがかなり残酷である上にあつかましい一面を見せている(したたかが風邪で休んだときの彼らの言動や水越先生の家に勝手に上がりこんで情け容赦なく秋の味覚を食べている場面の彼らには「人のこといえるのか?」という印象さえある)。まあ、それは小学生という残酷で未成熟な存在ゆえにまだまだ許容範囲なのかもしれない。むしろ小学生でありながらしたたかやコタローなんかと付き合える本郷にどこか「大人」というものを感じたのだが。これに対して小林や鈴木はしたたかとあからさまに敵対し、しかも時としては「したたかやコタロー以上に性質が悪い連中」という印象さえ感じさせる。最初にその兆候を見せたのは鈴木で、粘土工作のときにしたたかがまだ出来ていないと制しているのに勝手にしたたかが作っている似てない粘土細工を見て勝手に泣き出す(そのくせしたたかに似せて作った自身の粘土細工は下手糞)など、勝手に決め付けてわめき散らす様は愚かさからくる駄目なところをみせていた。一方の小林は金持ちボンボン的な嫌みったらしさと陰湿さ、そしてしたたかだけでなくコタローに対しても不愉快な態度を見せている。しかもこいつの場合は愚かなところもあるが悪知恵でしたたかなどに対して悪意を見せるところがあり、その如才ない優等生ぶりからしてあまり取り締まれない性質の悪ささえ感じさせた。まあ、後のほうになってくるとしたたかは関わろうとしている訳ではないのに小林たちが絡んでくるという話もあるので、あまり賢明ではないのだろうけど。彼らを受け持つ水越先生は、一組の嫌味で型にはめたがる矢奈先生と比較すれば、若く一生懸命でしたたかやコタローに対しても真剣に向き合ってくれる先生であるが、彼女は無神経で思慮に欠けたところが大きく、かなり残酷な一面を持った印象さえある。時にはしたたかに盗みの嫌疑がかかった(小林が持ってきた時計絡み)話では真犯人がしたたかでない事がわかると笑顔でばっくれようという醜悪な様(ギャグとはいえこれはあんまりな気さえした)を見せていた記憶が。その所為かいまひとつ好きになれなかった印象がある。それでもしたたかも彼女に対し悪く思っていない(前の学校の先生がひどすぎたのだろうか?)ところとか、未熟ではあるが見所がないわけではない辺りマシなのかもしれない。
そんな彼らの父兄という面で記憶に残るのはしたたかの父のあさはか、コタローの父、そして本郷の父であろうか。まずあさはかだが、したたかとの最初期の関係は笑えるのと引くのが一緒になった印象さえある。自分をガラパゴスに置き去りにした相手に対して憎しみを覚えるのは当然とは言え当然だが、時としてこのときの関係ゆえに成立したギャグに笑えるものがあるとはいえ、引く人が多かったのではないのか?その証拠に「ラメーン、ビルー」の話で共闘させてからは表立って険悪な描写がなくなったのであろう。だからといって「仲がいい」とは思えないのだが(きっと双方で休戦状態なのであろう)。次にコタロー親子だが、一応おでんの屋台を引いたりとまじめに働いている印象はあるのだが、コタローの父は息子に対して自分の色に合わせさせすぎており、また話が通じる様でまったく通じないというかなり問題のある印象がある。コタロー自身もしたたか以上にあつかましく貧しい故に欲に釣られやすい上に社会性や常識に欠ける(したたかは大勢の兄弟といるだけでもある程度社会性や常識は身につけてはいる。少なくともコタローよりは)ものの、したたかに比べるとカラっとしたところはあるのだが、コタロー父が【おやおや親父】のたくましい親父のイメージに近いのを考えると、そういうものかと感じさせる。そして本郷の父だが、共稼ぎでありながら息子の授業参観に参加したり息子との親子レースでの息の合いっぷり、モデル並みのハンサムさで笑顔を絶やさない人当たりのよさ下奈雰囲気とは裏腹に本性はかなりキツイ嫌な奴であった。一応、よき父親でよき家庭人なのかもしれないが、笑顔で他人の息子を愚弄する辺りにはかなり問題があり、外でも案外敵を作りそうな人柄なのかもしれない。こういう「性格が悪くても自分に対しては良くしてくれている」相手がもっとも身近な父親という辺りに、彼と常に付き合っている、いや付き合わざるを得ない本郷がその性格を鍛えていき"大人びた"性格になっているのではと思わせる。この親子に関しての話は連載が続けばもっと読めたのではないかと思わせるとかなり惜しい。
そういう観点から見ると、この作品は変態的なしたたかやコタローはあくまでも極端な存在でしかなく、むしろ常識人の面々のほうのダメな部分を意図的に掠めさせているものなのではと思わせる。そしてそこから思えるのは、「変態も普通の人も同じ人であるのには変わりない。いいところも駄目なところも」というメッセージなのではと思わせる。そしてその中に於けるしたたかのうまくいかなさというもどかしさはギャグ漫画のオブラートに包んでこそあるものの、普遍的で陰のあるものを感じさせた。
しかししたたかは不幸な小学生時代を送っているのか?それは「No」といえるであろう。相対的でありながらもマシな先生のクラスにいるし、常識人クラスメイトの中にはあからさまな敵(小林、鈴木)こそいるものの、友人として真剣に付き合ってくれる面々(本郷、アキラ、ツトム)もいるので「完全に孤立しているわけではない」といえるので、そういう意味では幸せなのではないのかと思わせる。
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