アニメ総合点ランキング: 1,302位/2,719作品中 (総合点6.00/偏差値47.99) 1,301位 <= =>1,303位
[他形式: RSS/携帯版/English]
読み仮名: あるまちかどのものがたり / 英語タイトル: Aru Machikado no Monogatari
2005/04/04 とても良い [編集・削除/削除・改善提案/論客限定表示/]
by 37moto 評価履歴[良い:99(99%) 普通:1(1%) 悪い:0(0%)] / プロバイダー: 30727 ホスト:30512 ブラウザー: 6251
とある街角のささやかな幸せに満ちた情景を覆い隠す戦争の影を描く、ヒューマニズム作品。いわゆる
手塚治虫実験アニメーション第1作。第17回毎日映画コンクール・第1回大藤信郎賞、第17回芸術祭奨励
賞ほか受賞多数。
手塚治虫の代表作と評する人も多い、日本のアニメーション史上屈指の名作。アニメーションで「戦争
と平和」といった社会的テーマを描くことができることを示した画期的な作品であり、後の「火の鳥」
から「森の伝説」、あるいは「未来少年コナン」や「千と千尋の物語」といった作品群の源流でもある。
今だからこそ作品の内容にいろいろ注文をつけることもできるが、本作公開当時、こうしたテーマをア
ニメーションで表現しようとする発想自体があまりにも斬新であり、それを驚異的なレベルでやっての
けた手塚治虫の手腕には、ただ脱帽するのみ。個人的には、日本アニメ版「ウェストサイド物語」かと
思う…最初に新しい世界を切り拓いた作品は、どんなに時代が流れても永遠に新しいのです。
冒頭のテキストを除くと、物語は画面と背景音楽のみで進行する。街角で同時進行的に繰り広げられる
いくつもの物語が全く混乱なく理解できるのは、驚異的ともいえる演出の巧みさに他ならない。街中の
ポスターが今を楽しむ場面では、超リミテッドアニメならではの動きの楽しさに加え、漫画家手塚治虫
らしい細かなギャグがふんだんに盛り込まれ、決して飽きさせない。そのさなかフルアニメーションで
登場する軍靴という作画上の対比が、なんとも心憎い。
作品のクライマックスとなる空襲のシーンでは、観客の感性への徹底したアプローチによって戦争の真
の姿を描こうとしており、現在主流の作画上のリアリズムとは正反対の演出手法が興味深い。愛し合っ
ていた2枚のポスターが、爆風に飛ばされることで初めてめぐりあい、喜びに溢れながら燃え尽きてゆく
というシークエンスが、特に秀逸。
後の手塚作品とは大きく異なるメルヘンタッチのキャラクターは、輪郭線を排した斬新な作画が、独特
の効果を上げている。また、最後に登場する5段マルチ(!)や、少女が燃え残った熊のぬいぐるみを抱き
あげるシーンでの大胆な構図転換など、斬新な映像表現の数々も見逃せない。ただ技巧を見せるだけで
なく、その技巧がちゃんと物語の中で意味を持って登場している点がすばらしい。曲の後から作画した
作品という面もあり、音楽と映像の絡み合いも絶妙。余談ながら、しっかりヒョウタンツギが登場する
のも楽しい。
21世紀初頭のアニメーションの主流からはもっとも遠い作品かもしれない。だけど、現在高い人気を得
ている作品の中で、本作と同じ程度に「世界を表現している」作品がどれだけあるかと問われると、言
葉に窮してしまう(決してゼロとは思いませんが)。アニメーションという表現手法を味わうために、お
気に召すかどうかはともかく、ぜひ一度ご覧いただきたい作品の一つ。
評価投稿 / 作品DB目次
この作品の全ての書込みを表示する